魚類消化管中の各種消化酵素の精製と作用機作に関する研究

抄録

近い将来、世界人口は100億人を超えると予想されており、その後さらに人口が増加すると食糧タンパク質の不足が予想され、陸地の資源を最大限に利用しても限界があるといわれている。このような問題を解決する方策のひとつとして、天然魚類資源の確保と魚類の養殖の効率化は急務となっている。養殖を行うためには、対象魚の生理、生態ならびに食性に関する研究が必要であるが、魚類の生態ならびに生理などについての基礎的な問題が解明されていない。現在の養魚飼料は、主に家畜の飼料をベースに、体重増加等の成長速度との相関を主体とし開発されているのが現状である。魚類の消化器官の様相はほ乳類と大きく異なり、魚類専用の合理的な養魚飼料を開発するためには、魚類の生理および生態に関する知見を得ること、さらに、経済効率が高く、環境汚濁の少ない飼料を開発する必要がある。筆者は、従来の飼料開発研究とは観点を大きく変え、対象魚種の食性や飼料消化について詳細を解明し、合理的な飼料開発ならびに未利用資源の飼料としての有効活用化を進めるための一連の研究を行っている。本稿は、雑食魚で養殖魚として優れた特性をもつテラピアを用いて、主要な消化器官である胃および腸管より消化酵素を分離精製し、その性状を明らかにし、さらに、これらの結果を基に魚類の消化酵素による飼料原料の分解挙動ならびに分解生成物の様相について検討した成果をまとめたものである。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ