東京都産軟化ウドの生産,流通および消費の実態と生産振興に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • Blanched udo produced in Tokyo: Field research for the promotion of production and consumption
  • トウキョウトサン ナンカ ウド ノ セイサン,リュウツウ オヨビ ショウヒ ノ ジッタイ ト セイサン シンコウ ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

多様なニーズに応える軟化ウドの新品種や栽培・加工に関する新技術の開発を目指して,マーケティング調査を行った。調査では統計資料の参照,ヒアリング調査,グループインタビュー,レシピ調査,WEBアンケートを実施し,東京都における軟化ウドの生産・流通・消費の実態を明らかにした。調査の結果,まず生産面では,東京産の軟化ウドは長茎が主流であり,生産量の約7割が生産者によって市場外出荷されていた。その内訳は個人向けの贈答用や飲食店との契約が中心であり,ブランド力を活かした独自の販路を持つことで,他産地との差別化を図っていた。また流通において,東京産の軟化ウドは品質の良さや地場産であることが評価されており,高いブランド力が示された。一方で,出荷の量や時期が不安定であることや,店頭に陳列した際の緑色化やカットした際の褐変化など変色しやすい特性が問題となっていた。また,小売店では陳列スペースの節約や持ち運び,少人数の家族でも消費しきれるという観点から,従来の長茎の規格よりも,より小さいサイズの軟化ウドへの需要が高かった。次に消費面では,軟化ウドの東京都における認知度は高く,食経験のある人も多いものの,購入経験や調理経験のある人が比較的少なく,この傾向は特に若年層に顕著であった。年齢層を問わず広く好まれる特徴は,軟化ウドの食感であった。以上から,軟化ウドの生産・消費拡大のための主な課題は,(1)出荷の安定化と作期拡大,(2)変色防止技術の開発,(3)ニーズに合った少量規格の作成,(4)若年層を主な対象としたPR活動,の4点にあると結論付けた。これらの課題の背景には複数の原因があり,それらが密接に関連しているため,今後,生産者・流通業者・農協・試験研究や普及指導機関など複数の組織が一体となって包括的に課題解決に取り組んでいくことが重要であると考えられる。

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