高校地学における近赤外衛星画像を活用した火山地形学習と防災教育

書誌事項

タイトル別名
  • Learning Volcanic Topography and Disaster Prevention using Near-Infrared Satellite Imagery in High School Earth Science Education
  • コウコウ チガク ニ オケル キンセキガイ エイセイ ガゾウ オ カツヨウ シタ カザン チケイ ガクシュウ ト ボウサイ キョウイク

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説明

地域住民に対して多大な影響を与える桜島火山や霧島新燃岳火山の噴火活動が近年活発化し,地域住民がその活動に強い関心を持つようになった。また多くの犠牲者を出した東北地方太平洋沖地震によって得られた教訓から,地学教育や防災教育の必要性が再認識されて来た。しかし火山防災教育を例にとると,高校生の火山防災マップに対する認知度・理解度は非常に低く,災害発生時に国・地方自治体・研究者らが意図する防災効果が十分に得られる現状にはない。本論文では,現在,初等・中等教育の学校現場において,情報機器やインターネット環境が整い始めている点に着目した。これを活用した初等・中等教育の地学教育が,現在の萌芽的なものから今後大きく発展する可能性がある。次に本論文では,地球観測衛星によって撮影された画像の中で近赤外(NIR)画像が,火山地形,植生などの観察に適しており,近赤外立体視(NIR 3D)画像は,火山・断層地形,段丘などの検討に活用できる点に着目した。しかしこれまで初等・中等教育の中で,NIR画像およびNIR 3D画像を活用した火山教育の実践例はほとんどない。この二つの着目点から本論文では,衛星によって撮影されたNIR画像・NIR 3D画像を高校地学授業の中でインターネットを活用して取得し,そこで九州地方にある特徴的な火山地形を教材化し,火山防災マップと併用しながら火山地形教育の研究を行った。これにより生徒は,この学習を通して火山やその地形に関する知識や技能を身につけ,火山災害への高い防災意識を持つようになることが明らかになった。そして火山防災に対する正しい知識・技能を身につけ, 防災訓練などへ積極的に参加しようという意識を持つようになることも明らかになった。本論文は, 学校現場において充実しつつある情報機器やインターネット環境を有効に活かし, さまざまな災害が複合的に発生する火山災害から身を守る防災教育を構築することが可能であることを示した。しかし高校教育の中で科目地学基礎・地学を採用している学校は少数である。それゆえこうした防災教育を大きく発展させるためには, 小学校・中学校においてこうした取組みを行う必要がある。本論文の結果はその基礎としても役立つものと考えられる。

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