北海道地券発行条例によるアイヌ民族「住居ノ地所」の官有地第三種編入について : 札幌県作成「官有地調」の検討を中心として

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書誌事項

タイトル別名
  • A Study on the Incorporation into Government Land Class III of ‘Land developed by Former Natives’ : under the Hokkaido Ordinance for Issuing Land Certificates
  • ホッカイドウチケン ハッコウ ジョウレイ ニ ヨル アイヌ ミンゾク 「 ジュウキョ ノ ジショ 」 ノ カンユウチ ダイサンシュ ヘンニュウ ニ ツイテ : サッポロ ケン サクセイ 「 カンユウチチョウ 」 ノ ケントウ オ チュウシン ト シテ

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説明

1877(明治10)年12月制定の北海道地券発行条例第16 条により、アイヌ民族「住居ノ地所」は原則的に官有地第三種に編入し、場合により所有権を認めることがありうると定められたことが知られている。しかし、その運用の実態については、『開拓使事業報告』の地籍表に記載された「官有地第三種旧土人開墾地」の解釈をめぐって複数の見解があり、判然としなかった。最近の研究によって、アイヌ民族が利用してきた土地は、地租創定の時点で丈量の対象となった場合と、丈量の対象とならなかった場合があり、前者は丈量後に所有権が留保され官有地第三種に編入・存置された場合と、丈量後に私有地として所有権が認められた場合とがあることが明らかにされてきている。しかし、未だ個別地域の事例研究にとどまり、全体像の把握が課題として残されている。本稿ではこの点について、開拓使札幌本庁及び札幌県が作成した文書によって、基礎的な情報を整理した。検討の結果、『開拓使事業報告』の地籍表に記載された「旧土人開墾地」の数値は、地租創定の時点で丈量後に官有地第三種に編入・存置された地所の面積であり、その中には少なくとも宅地と耕地が含まれていることを指摘した。また、札幌本庁管内のアイヌ民族総人口に対し、(1)丈量後に所有権を留保し官有地第三種として存置する措置がとられた地域の住民は21.4%、(2)丈量後に私有地として所有権が認められた地域の住民は3%に過ぎず、(3)その他の大部分の人々の居住地は丈量の対象外とされていたことを指摘した。

収録刊行物

  • 北方人文研究

    北方人文研究 16 19-35, 2023-03-25

    北海道大学大学院文学研究院北方研究教育センター

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