〔論文〕夫婦カウンセラーの語りからみた「話し合えない」夫婦たちの問題の構造 : M-GTA による分析から

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タイトル別名
  • The Structure of the Problems Faced by Couples Who ‘Can't Talk’ as Seen from the Perspective of Couple Counselling:An Analysis Using M-GTA

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説明

今日、夫婦たちはどのような場合にコミュニケーションがかみ合わなくなるのだろうか。先行研究では、夫婦の固定的性別役割分業意識が弱まるなかで、コミュニケーションの問題がより顕著になっていることや、感情だけではなく合理性を重んじた個人主義的な文化の広がりも指摘されてきた。本稿は、夫婦関係の悩み相談を行う「夫婦カウンセリング」に着目し、カウンセラーたちへの半構造化インタビュー調査から、夫婦が「話し合えない」状態に陥るプロセスを明らかにするものである。  修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析の結果、おもに「話し合えない」状態には、【話していない】、【話し合い不成立】、【一方通行】という3 パターンがあることが明らかになった。これらに【通底する難点】として、夫婦であってもそれぞれの状況のとらえ方や感じ方には経験や慣習によって違いがあるが、その違いに気づけないために、結果的にすれ違ってしまうという問題もあった。  また、現代の夫婦は各々多様な事情があり、一概にこうすべきといえない状況のなかで、とくに経済的劣等感を抱える専業主婦や子育てに積極的な「新しい」父親たちの孤独感、仕事にも精を出す働く母親たちの焦燥感など、社会構造上の問題もあった。ときに夫婦の理想像がむしろ夫婦の話し合いを阻害したり、話し合いを重視する度合いが妻と夫で異なったりすることで、自力での「話し合い」が困難となることがわかった。

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