自律とは何か? : 中上健次の「書くこと」の意味について

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  • ジリツ トワ ナニカ ナカガミ ケンジ ノ カクコト ノ イミ ニ ツイテ

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抄録

言葉の意味、すなわち、一つの言葉によって炙り出されるものは常に変化し、それに伴う「自己決定」も一つのところに留まらず相対的に変化する。中上健次(1946-1992)は、そういった言葉の意味に係わる根元的な問題を文学の問題として捉えた作家の一人であった。中上は、歴史や文化によって異なる様々な共同体のルールの中で、ある言葉が目の前の他者と「今・ここ」での一回限りのコミュニケーションを成立させる時、その言葉の意味しうるものは何かという問題について文学の場から生涯を賭けて問い直そうとしていたように思う。本稿では、主に中上健次の初期エッセイを読み解きながら、小説家を志したばかりの中上が自身の文学的営みの原動力の一つとして自覚していた、個と共同体が相補的に互いの前提として働きあうための自律性、主体的自由といった概念について考察し、中上文学における「書く」という行為の自律性を文学理論の一つと看做すことができるかどうか、その可能性を探るものである。

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