唯識学派の『金剛般若経』理解

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  • Yogācārin's Understanding of Vajracchedikā-prajñāpāramitā-sūtra

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抄録

『中辺分別論』において登場する「無の有」という空性の相は、唯識学派が諸法に 「二取の無」という自性の存在を肯定していることを表す。このような自性肯定的な 空の理解は無着の『金剛般若経』の註釈である『三百頌般若に対する七十頌』と世親 によるそれの復註である『能斷金剛般若波羅蜜多經論釋』からも確認できることであ る。本稿は『金剛般若経』の逆説的表現に対する無着と世親との註釈を中心に唯識学 派が『般若経』の空をどのように理解したのかを考察する。 『金剛般若経』は逆説的表現を通じて「一切法に自性がない」ことを表す。それを 無着と世親は「一切法には無自性という自性がある」と表現する。これは自性がない ことを一つの自性として認め、その存在を肯定することである。このように、唯識学 派は『般若経』の空を自性肯定的な考え方をもって理解したということが、『金剛般 若経』の逆説に対する註釈から確認される。

無の有

逆説

自性

『金剛般若経』

identifier:DB004700009241

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