身体拘束裁判例から考える個人の尊厳を基盤とする看護

書誌事項

タイトル別名
  • Nursing Based on Individual Dignity through a Physical Restraint Court Case

この論文をさがす

説明

人は,年齢を重ねるごとに心身機能の衰退や,病状の進行によって医療や介護を受けるために医療機関や介護施設への入院,入所を余儀なくされる。このような状況下,医療機関・介護施設における看護師による患者・入所者への身体拘束に関わる訴訟が提起されるようになった。【目的及び方法】本論文では最高裁が,看護師による高齢者への身体拘束の違法性を正面から判断した初めての事例を取り上げた。本判決は,本事案における看護師の看護のあり様をどのように判断しているのかを探り,そこから高齢者の尊厳を基盤とする看護には何が求められるかを考察した。【結果】身体拘束によって奪われるものは「個人の尊厳」である。抑制をしない看護の追及が個人の尊厳を基盤とする看護につながる。その看護とは,(1)患者・入所者の意思を尊重し,患者の意向に沿う看護,(2)高齢者のアイデンティティに依拠する尊厳を基盤とした看護;一人の患者としてのアイデンティティ(自己認識)から派生する尊厳をとおして患者が,自分自身を表出できるような関わりをもつ。(3)患者の内に在る尊厳(人としての価値)を見据えて患者と看護師の関係性を構築する,の3つである。【結論】「抑制のない看護」を模索するということは,一人の患者・入所者に真摯に向き合い,親身に対応し,その人の意思を尊重しようとする看護のあり様である。そして患者一人ひとりの尊厳を基盤とする看護につながることが期待される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ