豆本『猿かにはなし』影印と翻刻

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  • A Study of the miniature book, Sarukani hanashi , published during the Edo – Meiji periods.

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抄録

江戸時代後期から明治時代にかけて出版された子ども向け豆本類は,日本の出版史を知るうえでも,子ども向け絵本の歴史を知るうえでも,昔話の再話史を知るうえでも重要だと考えられる。しかし廉価な豆本は消費され捨てられてしまったり,個人蔵のまま埋もれてしまったりすることが少なくない。本稿では,豆本『猿かにはなし』(五雲亭貞秀,山口板)の影印と翻刻をおこない,その特徴について検討をおこなった。  『猿かにはなし』は,猿に殺された蟹の仇討ちを友人の蜂と臼卵が協力しておこなうという内容で,昔話「猿蟹合戦」に拠っている。あらすじは,当時主流で伝えられていたと考えられる内容に合致するが,会話に芝居の要素が含まれていたり,高さを強調する構図を用いたりと,絵と文の工夫により大人読者をも楽しませる読み物としての個性を発揮している。同時に,表紙に子どもを描いたり,子どもの成長を願う「麻の葉」柄を背景にあしらったり,最後にめでたい大黒の絵を加えるといった工夫からは,子どもを意識した絵本づくりもなされていたことも窺われる。

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