東京電力福島第一原発事故で全町避難となった統合失調症入院患者の避難行動からの社会復帰 : オーラルヒストリー法による聞き取り調査

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  • Social Reintegration of Schizophrenia Inpatients Following Evacuation Because of the TEPCO Fukushima Daiichi Nuclear Disaster: An Oral History Interview Study

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抄録

目的:震災発生まで精神科病院での長期入院生活を行っていた患者が、震災による福島第一原発事故後の避難行動、避難生活、そして意図せぬ退院からの社会復帰したことの語り内容を分析し、その促進要因を明らかにすることを目的としている。 方法:震災後の福島原発事故時に被災し,入院中の病院から避難指示によって避難した対象へのオーラルヒストリー法によるデータの収集を行った。 結果:対象は、若年期に統合失調症を発病し、約40年の長期入院による自信喪失が退院の障壁となっていた。ところが、福島第一原発事故により、大きな被害を受け、全町避難となった入院中の医療機関も避難の対象となった。対象はケースワーカーの助言を受けて、必要最低限のアイテムを持ち逃げたが、複数の病院を転々とした。最終的にK 病院で1年半を過ごすこととなるが、状態が安定し、地域への移行が進められる国の施策により、退院の機会が訪れた。対象は、病状の安定や経済的なサポート、関係者の支援を受け、グループホームへの退院を決意した。その後、アパートに暮らすようになり、社会活動に参加し、多くの人々と交流し、ピアサポーターとして活躍している。 結論:本研究の成功事例を通して、災害時の支援活動や長期入院後の地域への移行を促す際の支援策として有益である。事例からは、どうようの状況にある他の患者や支援者にも適応可能であり、より効果的な支援策の策定に役立つことが期待される。

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