既存添加物43品目の遺伝毒性試験

  • 林 真
    国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部
  • 田中 憲穂
    財団法人食品薬品安全センター秦野研究所 遺伝毒性部

書誌事項

タイトル別名
  • Genotoxicity of 43 Existing Food Additives
  • キソン テンカブツ 43ヒンモク ノ イデン ドクセイ シケン

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抄録

既存添加物43検体について、細菌を用いる復帰突然変異試験(Ames試験)、細胞を用いる染色体異常試験、および、マウスを用いる小核試験を実施した。その結果、43検体中12検体(およそ30%)に何らかの試験で陽性の反応が得られた。そのうち6検体(50%)は酵素剤であった。陽性となった検体の中で、Ames試験でのみ陽性となったものが、β一アミラーゼ、キシラナーゼ、グルタミナーゼの3検体であり、染色体異常試験のみで陽性となったものが、酵素分解カンゾウ、3種のクチナシ黄色素、トウガラシ水性抽出物、ササ色素、2種のβ一グルコシダーゼ(Aspergillus nigerとricoderma sp.)の8検体であった。誘発された染色体異常の内容としては、(A)構造異常と倍数性細胞の両方を誘発したものが3検体(2種のクチナシとβ一グルコシダーゼ)、(B)構造異常のみを誘発したものが4検体(酵素分解カンゾウ、クチナシ黄色素(サンプルC)、フィターゼ、2種のβ一グルコシダーゼ(Aspergillus nigerとricoderma sp.)、(C)倍数性細胞のみを誘発したものが1検体(トウガラシ水性抽出物)であった。また、フィターゼに関してはAmes試験と染色体異常試験の両方で陽性を示した。細菌を用いるAmes試験で陽性結果を示した添加物の誘発頻度に関しては、フィターゼがコントロール値の5倍程度を示した以外、ほとんどの検体では2倍程度の弱い誘発頻度であった。一方、染色体異常の頻度に関しては、3種のクチナシ黄色素では11-46%の範囲で構造異常が認められた。酵素分解カンゾウではn%の構造異常が誘発された。また、トウガラシ水抽出物での倍数性細胞の誘発は10%と高い値を示した。2種のβ一ガラクトシダーゼとフィターゼに関しても10%以上の構造異常誘発が観察された。これらの高い染色体異常誘発の濃度域では細胞毒性も強く現れる傾向にあった。一方、動物個体を用いる小核試験では、すべての添加物が陰性を示した。このことは、in viroで認められた染色体異常誘発性が、生体内で発現する可能性は低いものと考えられる。また、Ames試験での弱い陽性反応は、被験物質に混在しているヒスチジンによる可能性がある点、また、陽性反応は使用実態と比較して非常に高用量で認められる点等を考慮すると、陽性反応が認められたものについても、早急に行政的処置が必要なものではないものと考えられる。

収録刊行物

  • 食品衛生学雑誌

    食品衛生学雑誌 46 (5), 177-184, 2005

    公益社団法人 日本食品衛生学会

参考文献 (41)*注記

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