ササラダニ類に関する非破壊的DNA抽出法の検討

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  • Non-destructive DNA extraction protocol for oribatid mites (Acari: Oribatida)

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抄録

中型土壌動物のひとつであるササラダニ亜目は,体長0.2-2.0mmと通常のDNA抽出処理には小さいため,体全体を破砕しDNA抽出に供することが一般的である.Cruickshank et al.(2001)は,その報告の中で,シラミを材料とした非破壊的DNA抽出法を用いた.本研究では非破壊的DNA抽出法がササラダニ類においても外部形態情報を非破壊のまま維持しながら,塩基配列情報を得ることができるかを検討した.核遺伝子上の28SリボゾームRNA遺伝子上のD3領域を対象にPCR増幅を行い,塩基配列を取得した.実験に供した種は,Atropacarus striculus(C.L.Koch,1836),Heminothrus(Platynothrus)peltifer(C.L.Koch,1839),Protoribates sp.AO-2010である.DNAの抽出の前処理として,(1)前処理を行わない無傷の個体(非破壊的抽出個体),(2)前処理として後体部のみ物理的に潰した個体,そして,(3)従来通り体全体を磨砕した個体を試料として用いた.それぞれ4個体を用い3通りの前処理の後,Johnson and Mockford(2003)および吉澤(2005)に従い,プロテアーゼKを抽出緩衝液中に添加し,55℃で48時間の恒温処理を行なった.抽出緩衝液よりDNeasy Blood and Tissue Kit,Mini Spin Columns(Qiagen Inc.,Hilden,Germany)を用いてDNA抽出を行い,得られたDNA溶液よりPCRを行ったところ,いずれの方法でも,すべての個体でPCR増幅産物が得られた.また,非破壊的抽出を含む3通りの前処理のいずれにおいても塩基配列を得ることが出来た.DNA抽出後,前処理を行わない非破壊的抽出個体(1)をプレパラート標本とし,破損程度を精査したところ,分類群の違いに基づく外骨格の形態の相違に関わらず,背毛,背孔などの外骨格上の形態形質について破損・損傷は確認できなかった.

収録刊行物

  • Edaphologia

    Edaphologia 89 (0), 19-24, 2011

    日本土壌動物学会

参考文献 (23)*注記

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