小児重症紫斑病性腎炎に対する血漿交換療法の有効性とその限界

  • 此元 隆雄
    東京女子医科大学 腎臓小児科 現 宮崎医科大学 小児科
  • 服部 元史
    東京女子医科大学 腎臓小児科 現 千葉県こども病院 腎臓内科
  • 甲能 深雪
    東京女子医科大学 腎臓小児科
  • 川口 洋
    東京女子医科大学 腎臓小児科
  • 伊藤 克己
    東京女子医科大学 腎臓小児科

書誌事項

タイトル別名
  • Plasmapheresis for Children with a severe type of Henoch-Schölein Purpura Nephritis
  • Plasmapheresis for Children with a severe type of Henoch-Schölein Purpura Nephritis

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抄録

紫斑病性腎炎 (HSPN) に対する血漿交換療法 (PP) の有効性とその限界を明らかにする目的で,PP単独療法を実施した小児重症HSPN17例 (男女比: 10/7,発症年齢: 8.1±3.2歳) の臨床経過をretrospectiveに検討した。PP治療開始時には全例で高度蛋白尿 (4.7±2.5g/m2/日) がみられ,うち11例で腎機能低下 (51.6±14.1ml/min/1.73m2) が認められた。発症からPP開始までの期間は平均76.1±86.5日であったが,うち11例は発症後2カ月以内にPPが開始されたのに対し,1例は発症後1年以上経過してからPPが開始された。PP開始直前に実施された腎生検では,半月体/分節性病変形成率は平均71.8±11.1%であった。PPは導入療法として週3回の割合で2週間,その後週1回の割合で6週間,合計12回を目途に実施した。PPの短期的治療効果 (治療開始3カ月後) として,発症後1年以上経過してからPPが開始された1例を除く16例で有意な蛋白尿の減少 (1.2±0.7g/m2/日,p<0.01) が,また同様の1例を除く10例で明らかな腎機能の改善 (89.9±14.0ml/min/1.73m2,p<0.01) が認められた。長期的治療効果として治療開始3カ月以降の蛋白尿の推移を検討したところ,(1)蛋白尿が引き続き減少し最終的に陰性化した群: 蛋白尿消失群 (n=11) と,(2)蛋白尿が再び増加した群: 蛋白尿持続群 (n=6) の2群に分かれた。蛋白尿消失群のなかで腎機能が低下した症例はなかったが,蛋白尿持続群6例中3例が透析導入に至った。透析導入例のうち1例はPPによる短期的治療効果がみられなかった症例であった。PPは小児重症HSPNに対して有効な治療法である。しかし,PPによる大きな効果を得るためには,発症後早期から実施することが肝要である。一方,疾患活動性が長期にわたり持続する症例に対しては,ステロイドや免疫抑制剤による後療法の必要性が示唆された。

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