自由対流圏における大気中水銀の起源と輸送経路の関係

  • 木下 弾
    日本インスツルメンツ株式会社
  • 永淵 修
    福岡工業大学総合研究機構環境科学研究所 九州大学総合研究博物館 統計数理研究所
  • 中澤 暦
    福岡工業大学総合研究機構環境科学研究所 九州大学総合研究博物館 統計数理研究所
  • 横田 久里子
    豊橋技術科学大学建築・都市システム学系

書誌事項

タイトル別名
  • Relationship between origin of atmospheric mercury and pathway of air mass observed at free troposphere
  • 自由対流圏における大気中水銀の起源と輸送経路の関係 : 富士山体における観測
  • ジユウ タイリュウケン ニ オケル タイキ チュウスイギン ノ キゲン ト ユソウ ケイロ ノ カンケイ : フジサンタイ ニ オケル カンソク
  • -富士山体における観測-
  • -Observation on Mt. Fuji-

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説明

<p>大気中水銀(Hg)の長距離越境輸送の実態を明らかにするため,その現象が最も現れやすい自由対流圏においてtotal gaseous mercury(TGM) の観測を行った。観測は富士山体を利用し,山頂(3776 m)から5合目(2230 m)の間に6か所の観測点を設け,2009年8月から9月に5回(#1,#2,#3,#4,#5)行った。TGMの測定はパッシブサンプラーを主体にアクティブサンプラーを補完的に併用して行った。観測期間中のTGM濃度の範囲は,1.00~5.00 ng/m3に分布した。5回の観測の内,TGM濃度が鉛直方向に変化がないイベントが3回(#1,#4,#5),一方,高標高でTGM濃度が高くなる鉛直分布を示すイベントが2回(#2,#3)であった。前者のTGM濃度は全標高で北半球のバックグラウンド値(1.50 ~1.70 ng/m3)程度であった。一方,後者では,高標高において2.00~5.00 ng/m3の範囲に分布し,低標高において1.00 ~1.50ng/m3に分布した。TGMの鉛直分布と気塊の輸送経路の関係を検討した結果,前者の場合は各標高での輸送経路はほぼ同じであり,後者の場合は,各標高での輸送経路が異なっていた。TGMの鉛直分布を示す典型的な例として#3(8月28日~8月30日)の後方流跡線解析の結果は,東アジアから気塊の進入する割合(C. Ratio)が標高の高い方から低い方へ減少し,それに関連するようにTGM濃度も減少した。この時の輸送経路から,富士山体の高標高に到達する気塊は,中国を通過中には人為活動の影響が大きい低標高を通過し,汚染大気の流入寄与が大きいことが明らかになった。</p>

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 29 (6), 275-282, 2016-11-30

    社団法人 環境科学会

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