嚥下機能の変動を観察し得た抗 Hu 抗体陽性の傍腫瘍性神経症候群の 1 例

DOI
  • 宮地 英彰
    九州大学大学院医学研究院臨床医学外科学講座耳鼻咽喉科分野
  • 梅崎 俊郎
    九州大学大学院医学研究院臨床医学外科学講座耳鼻咽喉科分野
  • 安達 一雄
    九州大学大学院医学研究院臨床医学外科学講座耳鼻咽喉科分野
  • 山下 泰治
    九州大学大学院医学研究院付属脳神経病研究施設神経内科
  • 的場 麻美子
    九州大学大学院医学研究院臨床医学外科学講座耳鼻咽喉科分野
  • 小宗 静男
    九州大学大学院医学研究院臨床医学外科学講座耳鼻咽喉科分野

書誌事項

タイトル別名
  • Paraneoplastic dysphagia associated with anti-Hu antibody and lung carcinoma

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説明

悪性腫瘍において腫瘍の転移や圧迫や浸潤、または、感染や虚血や代謝異常によらず神経症状を伴うものを傍腫瘍性神経症候群 (paraneoplastic neurologic syndrome : PNS) という。血中や脳脊髄液中に腫瘍細胞と神経細胞に共通して存在する蛋白に対する自己抗体である抗腫瘍神経抗体 (onconeural antibodies) が見いだされており、これらの抗体による神経への自己免疫反応により多彩な神経症状を呈することが報告されている。しかし、現在までに PNS による嚥下障害の経過を嚥下造影で評価した報告はない。本症例は、原因不明の神経症状の精査中に嚥下障害を来したため当科受診し、その後約 9 カ月にわたり経過を追うことができた抗 Hu 抗体陽性の PNS の 1 例である。抗腫瘍治療直後に 2 度の一過性の嚥下自覚症状の悪化を生じ、嚥下造影検査では喉頭挙上遅延時間 (Laryngeal Elevation Delay Time) とクリアランス値の変動が観察された。観察された抗腫瘍治療直後の一過性の嚥下機能の悪化の病態には、抗 Hu 抗体を介する自己免疫機序の活性化の関与が示唆された。

収録刊行物

  • 耳鼻と臨床

    耳鼻と臨床 55 (Suppl.2), S177-S184, 2009

    耳鼻と臨床会

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