未治療前立腺癌患者における骨動態の検討

書誌事項

タイトル別名
  • BONE DYNAMICS IN MEN WITH PROSTATE CANCER
  • 未治療前立腺癌患者における骨動態の検討--骨密度と骨代謝マーカーについて
  • ミチリョウ ゼンリツセン ガン カンジャ ニ オケル コツ ドウタイ ノ ケントウ コツミツド ト コツ タイシャ マーカー ニ ツイテ
  • ―骨密度と骨代謝マーカーについて―

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抄録

前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法 (ADT) は骨量の減少を促進することが知られており, 高齢者が多い前立腺癌においては重大な副作用といえる.また近年前立腺癌患者では, 骨転移がなくかつADTの施行前でも骨密度の低下を認め得るとSmithらが報告している.そこで日本人の骨転移を認めないADT施行前の前立腺癌患者の骨量, 骨代謝について検討した.また, 骨転移を認めるADT施行前の前立腺癌患者についても同様の検討を行った.骨転移を認めない未治療前立腺癌患者53名 (平均73.6±6.4歳) , 骨転移を認める16名 (平均73.6±7.9歳) を対象とし骨量の評価を行った.骨量の評価には二重エネルギーX線吸収測定法 (DEXA) によって大腿骨近位部全体, 大腿骨頸部, 腰椎 (L2-L4) , =僥骨遠位端の4箇所の骨密度 (BMD) を測定した.また骨転移を認めない未治療前立腺癌患者62名 (平均74.0±6.9歳) と骨転移を認める22名 (平均70.0±7.5歳) , 健常人101名 (平均70.1±8.3歳) を対象として骨代謝マーカーを測定し比較検討した.骨代謝マーカーは血清1型コラーゲンN末端架橋テロペプチド (血清NTX) と血清骨型アルカリフォスファターゼ (血清BAP) を測定した.骨転移を認めない未治療前立腺癌患者のうち, 大腿骨近位部全体の骨密度の測定では17%, 大腿骨頸部の骨密度の測定では21%が男性骨粗霧症に相当した.また骨密度を測定した4箇所のうちZ scoreの平均値が負の値を示したのは橈骨遠位端のみであった.血中骨代謝マーカーの検討では骨転移を認めない未治療前立腺癌患者のうち11%に血清NTXの増加を認めた.またstageD2症例では骨代謝マーカーは, 骨転移を認めない症例より有意に高値であり, 前立腺特異抗原 (PSA) との間に有意な相関関係を認めた.日本人においては骨転移を認めない未治療前立腺癌患者の骨密度の低下は認めないと考えられた.しかし, すでに骨粗霧症の患者, 骨密度が低下している患者, 骨吸収マーカーが高値な患者も存在していることより, 診断時やADT開始時, 開始後の骨評価は重要と考えられた.

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