尿酸/尿素窒素比を指標とするヒト尿斑証明法の検討

書誌事項

タイトル別名
  • A STUDY ON IDENTIFICATION OF HUMAN URINARY STAINS BY THE URIC ACID/UREA NITROGEN QUOTIENT
  • 尿酸/尿素窒素比を指標とするヒト尿斑証明法の検討(3)尿酸吸収極大の減少率を指標とするウリカーゼ法との比較
  • ニョウサン ニョウソ チッソヒ オ シヒョウ ト スル ヒト ニョウ ハン ショウメイホウ ノ ケントウ 3 ニョウサン キュウシュウ キョクダイ ノ ゲンショウリツ オ シヒョウ ト スル ウリカーゼホウ ト ノ ヒカク
  • III. COMPARISON OF THE QUOTIENT METHOD AND THE URICASE METHOD
  • III.尿酸吸収極大の減少率を指標とするウリカーゼ法との比較

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抄録

ヒトおよび類人猿では他の哺乳類と異なり尿酸酸化酵素(ウリカーゼ)を欠損しているため,プリンの大部分は最終代謝産物の尿酸(UA)として尿中に排泄される.この事実に基づき,法医鑑識領域におけるヒト尿斑証明法は尿斑中のUAを検出する方法がよく用いられる.中でも,ウリカーゼによるUA吸収極大の減少率を指標とする若槻らのウリカーゼ法が広く用いられてきた.ウリカーゼ法は手技が簡便であり,結果が明確であるなど優れた方法ではあるが,飯酒の影響を受けることやトリ糞斑が鑑別できないなど,UAのみを指標としたヒト尿斑鑑別には問題点もある.そこでSatoらは試料濃度を補正すると同時にトリ糞斑を区別する目的で,UAのほかに尿素窒素(UN)を同時に測定し,両者の比の値を指標とするヒト尿斑証明法を開発した.しかしながら,今のところウリカーゼ法とUA/UN比の値を指標とするヒト尿斑証明法を比較した報告はみられない.そこで本研究では,この2つの方法でヒト尿斑および14種のサルの尿斑,31種類のイヌの尿斑,サルとイヌ以外の11種の哺乳類の尿斑,6種のトリ糞斑をそれぞれ分析し,詳細な比較検討を行った.ウリカーゼ法では,プリン代謝がヒトと同じであるチンパンジーの尿斑とタンパク質の最終代謝産物がUAであるトリ糞斑がヒト尿斑と鑑別できなかったほか,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,モルモット,フサオマキザル,ワタボウシタマリンの尿斑の一部が鑑別できなかった.特に,ペットとして家の中で飼われることの多いイヌやネコの尿斑の一部,および人間社会の身近にいるウシやブタの尿斑やトリ糞斑がヒト尿斑と鑑別できないことは法医鑑識上大いに問題である.これはUA吸収極大の減少率を指標としているため,プリンを多く含む食餌を与えられているペットや家畜でヒトに類似の値を示したものと推定される.一方,UA/UN比の値を指標とする方法は,チンパンジーの尿斑の一部とイヌのダルメシアン種の尿斑がヒト尿斑と鑑別できなかっただけで,トリ糞斑を含め,ほかの動物の尿斑はすべてヒト尿斑と鑑別可能であり,ウリカーゼ法より法医鑑識上有用であることが証明された.この違いはUAのほか,UNを濃度補正の目的で同時測定し,両者の比の値をヒト尿斑の指標としている点にある.UA/UN比の値を指標とするヒト尿斑証明法は食餌内容によりその値が変動することに注意を要するものの,プリン代謝がヒトと異なる動物の尿斑は食餌内容にかかわらず,イヌのダルメシアン種以外は,すべてヒト尿斑と鑑別可能なUA/UN比の値を示したことは法医鑑識上大きな意義がある.

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