コガタアカイエカ幼虫の dieldrin 抵抗性の遺伝様式について

  • 海野 登久子
    東京大学医科学研究所寄生虫研究部:武田薬品工業株式会社
  • 鈴木 猛
    東京大学医科学研究所寄生虫研究部:日本環境衛生センター第二事業部

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on the mode of inheritance of dieldrin-resistance in larvae of Culex tritaeniorhynchus
  • コガタアカイエカ ヨウチュウ ノ dieldrin テイコウセイ ノ イデン ヨウシキ ニ ツイテ

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抄録

1) ケージ内飼育に順化された406系と, 岡山県下で採集した野外系のコガタアカイエカの幼虫について, dieldrinの感受性をしらべたところ, 前者は感受性が高く, LC-50値が, 0.0018ppmであるのに比し, 後者はこれが, 0.15ppmと, 著しく抵抗性が高いことが分つた.2) これまでの経験から, 野外で採集したコガタアカイエカの多くは, ケージ内で交尾する性質が低く, 実験室内で累代飼育することは, 困難であるが, その♂と順化系♀の雑種は容易にとれるという性質を利用して, 実験室内淘汰により, ケージ内飼育が容易でかつdieldrin抵抗性をもつ系統を人為的に合成することができた.3) これらの系統, すなわち, dieldrin抵抗性系統(RR)-野外系♀×順化系(406系)♂から出発し, dieldrin淘汰によつて得られた系統, とdieldrin感受性系統(SS)-406系を用いて交配実験をした.RR×SSの交雑によつて, F1を得た.そのld-p lineは直線でRRおよびSSのld-p lineの中間に位置し, それぞれほぼ平行であつた.4) F1同志を交雑してF2を得た.そのld-p lineは, それぞれ死亡率25%と75%の位置にplateauないし変曲点を形成し, RR : RS : SS=1 : 2 : 1に分離した.5) F1×SS, F1×RRの戻し交雑の結果, それらのld-p lineは, 死亡率50%の位置にそれぞれ, plateauを示しRS : SS=1 : 1, RS : RR=1 : 1に分離した.6) 以上の結果から, コガタアカイエカ幼虫のdieldrin抵抗性は.少なくともmacroscopicな立場をとるかぎり, メンデル性の単因子性遺伝様式をとり, 抵抗性遺伝因子は, 感受性の遺伝子に対して不完全優性であると考えた.

収録刊行物

  • 衛生動物

    衛生動物 20 (3), 201-205, 1969

    日本衛生動物学会

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