戦前期宇治茶産地における国内市場への展開 : 通信販売を中心に

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タイトル別名
  • The expansion of the domestic market for the Uji tea industry during the prewar period : a study on the development of the mail order system
  • センゼンキ ウジチャ サンチ ニ オケル コクナイ シジョウ エノ テンカイ ツウシン ハンバイ オ チュウシン ニ

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抄録

本稿の課題は,戦前期宇治茶産地における通信販売の実態と意義を解明することであり,以下の3点を明らかにした。第1は,通信販売が広範に展開した背景である。1890年代以降の輸出不振により国内販路の急拡大を求められたことに加え,宇治茶ブランドの源泉たる品質管理の上で,中間流通を排除する販売チャネルが適合的であった。第2は,通信販売の実態である。郵便制度整備に伴い産地茶商の多くが導入し,全盛を迎えた1920年代には通信販売高が荒茶生産高に対して大きな割合に上り,移出高に対しても一定の割合を占めたが,昭和恐慌により後退した。第3は,通信販売が流通構造全体に与えた影響である。積極的な広告宣伝により,産地と直接取引する消費者が全国に展開したことは,産地問屋による卸売取引のあり方をも規定し,消費地小売店との直接取引への道を開くとともに,中間流通に対する牽制的効果を発揮する形で,産地主導による流通構造の再編に寄与したものと考えられる。こうして,宇治茶産地における国内市場への展開にあたっては,通信販売の導入という流通革新が重要な原動力となったのである。

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