中国の経済改革と工業配置の変動

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タイトル別名
  • Some Aspects of the Change of Industrial Location under Economic Reform Policy in China
  • チュウゴク ノ ケイザイ カイカク ト コウギョウ ハイチ ノ ヘンドウ

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抄録

国際分業下の東アジアが経済圏を形成するための地域的枠組みのあり方を展望する際, 一つの重要なテーマは, 社会主義国が改革政策を展開し, 東アジアの地域的分業ネットワークに参入しうるか, どうかである. 本稿は, 改革下の中国経済の再編と地域構造を工業配置の側面から実証し, 加えて東アジア国際分業関係に中国が参入する際の問題点を論じたものである. 1980年代を通じて, 中国の経済改革の重点は, 分権的・市場的計画経済システムを打ち立てることによって, 生産力の増強と地域経済の活性化を促すことにあった. しかし. 現実の分権過程で, 地域の利益主体である地方攻府への権限委譲が大きいため, マクロ・コントロールを伴わない全国的産業投資ブームを生み出した. 特に, 地方攻府は地域振興と財源拡充の見地から, 内需の高い消費財生産にシフトする選択的産業投資を進めた. その結果, 生産設備・技術・中間財を輸入代替に強く求める消費財産業は, 川上部門の素材産業の発展を伴わないまま, 外延的拡大による高度成長を遂げ, この間の工業化を牽引してきた. 一方, 地方分権は"差別ある"分権であったため, 工業の新規投資はとりわけ財源の豊かな地域に集中し, 地域間の成長格差をもたらした. 停滞は内陸部にとどまらず, 地方財政の請負を中央政府が遅らせた上海をはじめ, 既存の工業中心地にも広がった. また, 改革の過程で農村の工業化を主導してきた郷鎮企業の展開も, 沿海部の中の成長地域への集中が顕著であった. さらに, 国際分業への参入も, 外資導入を軸に沿海地域で進行しつつあるが, ワン・セット型地域経済の枠に固持する地方政府の主導下にあって, 国内の制度改革を支援するほど全面的に波及するには至っていない.

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