屋久島の野生ニホンザルによる農作物被害の発生過程とその解決策の検討

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タイトル別名
  • Crop damage by wild Japanese monkeys on Yakushima Island, Japan
  • ヤクシマ ノ ヤセイ ニホンザル ニヨル ノウサクブツ ヒガイ ノ ハッセイ

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屋久島では1970年頃から野生のニホンザルが果樹などの農作物に大きな被害(猿害)を与えるようになっている.その対策として毎年400-500頭のサルが駆除されているが,被害は軽減されていない.また,こうした大量捕獲はサルの保護上の問題にもなっている.ここではサルが農作物に被害を与えるようになった原因を,サルの生息環境および農業活動の変遷から検討した.屋久島では1960年代に広葉樹林の多くが伐採され,スギの植林地に変えられた.そのために,植林後10-20年経過した1970年代にサルの食物量が減少したと推定された.ちょうどその時期にサルの農作物被害が激化していることから,広葉樹林のスギ植林化が猿害の大きな原因になっているものと考えられた.また,1970年代には果樹園がサルの生息地に近い山林に拡大した一方で,農業従事者の減少や高齢化によって農業が衰退してきた.こうした農家の側での変化も猿害を招いた原因と考えられた.農作物被害を防除し,同時に野生のサルの保護をするには,おおもとの原因を絶つという意味から生息環境の回復が第一に必要といえる.さらに農作物防除を進めるためには,農地を物理的に守る機器と保守管理体制の整備,農業経営の強化が不可欠であると考えられる.

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