ヤスダハモグリガとバクチノキハモグリガ(ハモグリガ科)に関する生物学的知見

  • 安 能浩
    Invertebrate Research Division, National Institute of Biological Resources, Environmental Research Complex
  • 小林 茂樹
    Entomological Laboratory, College of Agriculture, Osaka Prefecture University
  • 広渡 俊哉
    Entomological Laboratory, Graduate School of Life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture University

書誌事項

タイトル別名
  • Biological notes on Lyonetia yasudai Kuroko and L. bakuchia Kuroko (Lepidoptera, Lyonetiidae)

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説明

原記載以降ほとんど記録がなかった日本産ハモグリガ科の2種について,分布,寄生植物,幼生期などの情報を追加した. ヤスダハモグリガ Lyonetia yasudai Kuroko 本種はKuroko (1964)によって和歌山県那智産の標本をもとに記載されたが,それ以降は追加記録がなかった.著者らは,2007年5月下旬に和歌山県白浜市安居(日置川流域)でバクチノキ(バラ科)に潜るハモグリガ科の幼虫を採集した.当初この幼虫は,本種に近縁なバクチノキハモグリガLyonetia bakuchia Kurokoと思われたが,羽化させた成虫の交尾器を確認したところ,ヤスダハモグリガであることが分かった(ヤスダハモグリガではaedeagusの先端近くの腹側に数個の逆棘があるが,バクチノキハモグリガではこの棘がない-Kuroko, 1964, 1982).その他に各地で得られた標本によって本種の分布・寄主を追加するとともにこれまで報告がなかった幼虫の潜孔,蛹,繭などの写真を示した.幼虫は寄主植物の柔らかい新葉に縁状の潜孔を作り,終齢幼虫は淡黄緑色.蛹は淡緑白色,頭頂部の1対の突起は尖らず不明瞭で腹部の気門の突出も弱い.黒子浩,久万田敏矢両博士の飼育記録なとからも,本種はいくつかの常緑のバラ科植物を利用することが明らかになったが,原記載のアカガシという記録については,再確認する必要がある. 寄生植物:アカガシ(ブナ科),リンボクノマクチノキ(新記録),カナメモチ(新記録)(バラ科).分布:本州(和歌山県,三重県(新記録)),四国(高知県)(新記録).バクチノキハモグリガ Lyonetia bakuchia Kuroko 本種は同じくKuroko (1964)によって鹿児島県の佐多岬半島産ならびに屋久島産の標本をもとに記載されたが,筆者らは静岡県函南町(函南原生林)でバクチノキに潜る本種の幼虫を採集した.Kuroko (1964-1982)は本種の成虫は10月下旬から11月に出現するとしているが,静岡県函南町では,2002年6月に幼虫がバクチノキから採集され,成虫は6月下旬に羽化した.おそらく,年に数回発生するものと思われる. 寄生植物:バクチノキ(バラ科).分布:本州(静岡県)(新記録),九州(鹿児島県).なお,本研究の一部は(財)新技術開発財団の助成によって行われた.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 59 (1), 18-22, 2008

    日本鱗翅学会

参考文献 (6)*注記

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