近代公教育の基本原理に関する再検討-歴史的形成要件とその現代的変移-

  • 古賀 毅
    日本橋学館大学リベラルアーツ学部

書誌事項

タイトル別名
  • Réflexions sur les grands principes de l'enseignemen public modernet
  • キンダイコウ キョウイク ノ キホン ゲンリ ニ カンスル サイケントウ レキシテキ ケイセイ ヨウケン ト ソノ ゲンダイテキ ヘンイ

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抄録

本稿の目的は、近代公教育を構成する諸原理の歴史的コンテクストを確認し、20 世紀の社会変化という視点でみた場合にそれが今日的にどのような意義をもつのかを考察することにある。〈義務・無償制〉これらの原理は、18 〜 19 世紀に西欧の国民国家が形成される過程にその起源をもつ。西欧諸国は、キリスト教会に代わって子どもたちを教育し、国力を強化しようと考えていた。当初、民衆が就学義務を受け入れることは難しかったが、社会の工業化が進む中で、義務制はその有用性から国民的なコンセンサスを得ていく。無償制は義務制を有効ならしめるのに不可欠のものであった。今日、社会の変化にかんがみて、これらの原理に対して次の2 つの疑問が示される。1)学業失敗を増やさずに、義務就学期間を中等教育修了にまで延伸することは可能か?2) 初等教育から中等もしくは高等教育まで、完全な無償制を実現するための財源は確保できるか?〈非宗教性〉非宗教性あるいは学校の非宗教化は、国あるいは文化ごとにさまざまな現れ方をするが、教会による主宰権が国家によって否定ないし制限され、教育内容には宗教的教義を含まないという共通点はみられた。とくにフランスでは、19 世紀の政教間の闘争に由来して、この原理が非常に厳格に維持されている。非宗教性は、多文化的動向あるいは非キリスト教徒との共生という事態を前に変容を迫られている。また今日では、ハイパー・サイエンスや高度技術に満ちあふれた社会の中で人間存在がいかにしてその自律性を確保していくかというような問いも、教育の非宗教性に影響を及ぼそうとしている。

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