自閉症スペクトラム障害の病態類型とバイオマーカー,治療方向性

  • 油井 邦雄
    独協医科大学小児科学講座 芦屋大学大学院発達障害教育研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Pathophysiology, Neurobiomarkers and Treatment in Three Subsets of Autism Spectrum Disorders
  • ジヘイショウ スペクトラム ショウガイ ノ ビョウタイ ルイケイ ト バイオマーカー,チリョウ ホウコウセイ

この論文をさがす

抄録

ASD の病態には,ミトコンドリアの機能障害,これと密接に関連するグルタチオン生成障害,さらに総合的抗酸化能の低下の 3 タイプが存在し,予後も治療方向性も異なっている。特に,ミトコンドリア機能障害に付随する ASD 症状は神経症状,易疲労性,胃腸障害,運動機能遅滞,けいれんを示し,かつ難治なので,診断と病態の把握は予後と治療にとって重要である。診断に役立つバイオマーカーとしては血液中の酪酸,尿中有機酸,血漿ピルビン酸,血清クレアチンキナーゼ,酸化アスコルビン酸(モノデヒドロアスコルビン酸,MDA),血液中の酪酸 / ピルビン酸の比,血清のアスパラギン酸トランスアミナーゼとアラニン酸トランスアミナーゼなど多数が報告されている。グルタチオン生成障害は社会的相互性障害,コミュニケーション障害,限定的・常同的行為といった中核症状を示すASD でも認められる病態であり,ミトコンドリアの機能障害へ容易に移行する。診断にはグルタチオン(GSH)/ 酸化型グルタチオン(GSSG)比の低下がバイオマーカーとなる。中核症状を示す ASD の一般的な病態は総合的抗酸化能の低下であり,この診断には酸化ストレスの度合(ヘキサノイルリジン, HEL)総合的抗酸化能(total antioxidant capacity,TAC)が役立つ。病態指標を検索したうえで,より合理的な診断と治療選択,予後の判断が行われることを期待したい。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ