低酸素曝露がマコガレイの生理指標に及ぼす影響および当該指標による海域の貧酸素化把握

  • 角田 出
    Department of Biotechnology, Senshu University of Ishinomaki

書誌事項

タイトル別名
  • Physiological Indicators of Marbled Sole, <I>Pleuronectes Yokohamae</I>, Exposed to Hypoxic Conditions and Captured in the Anoxic Water Regions of Tokyo Bay and Kesen-numa Bay
  • 低酸素曝露がマコガレイの生理指標に及ぼす影響および当該指標による海域の貧酸素化把握--貧酸素マーカーとしてのエリスロポイエチン
  • テイサンソ バクロ ガ マコガレイ ノ セイリ シヒョウ ニ オヨボス エイキョウ オヨビ トウガイ シヒョウ ニ ヨル カイイキ ノ ヒンサンソカ ハアク ヒンサンソ マーカー ト シテ ノ エリスロポイエチン
  • Erythropoietin as an Anoxic Biomarker
  • 貧酸素マーカーとしてのエリスロポエチン

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説明

海水の貧酸素化がマコガレイの生理機能に及ぼす影響を調べる (実験I) と共に, その生理指標を用いて海域の貧酸素状況を捉える方法を検討した (実験II).<BR>実験Iでは, 窒素曝気によって水中の溶存酸素濃度 (DO) を6, 4および2mg/Lに低下させた.また, 4mg/LDO群では, 7日間の低酸素負荷後, DOを通常レベルに回復させた.その結果, 6mg/LDO群では測定項目に有意な変化は認められなかったが, 4mg/LDO群では, 赤血球数が2, 12時間, 7日目に, 血漿コルチゾル濃度は2, 12時間目に, 腎臓EPO濃度は1日目以降に, それぞれ対照群に比べて, 有意に高い値となった.7日目には, 肝臓ATP含量が減少し, AMP含量は増加したため, 肝臓のアデノシンリン酸エネルギー値{AEC値: (ATP+1/2ADP)/(ATP+ADP+AMP)}は有意に低下した.DOを通常レベルに回復させた場合, 赤血球数および肝臓のArpとAMP含量が1日目に, 腎臓のEPO濃度は3日目に, それぞれ, 対照群の値に戻った.コルチゾル濃度は, 2時間目にのみ, 対照群に比べ有意に高い値を示した.<BR>2mg/LDO群では, 7日間の実験期間中に約11%の魚が死亡した.赤血球数は2, 12時間, 1, 7日目に, コルチゾル濃度は2, 12時間, 7日目に, 腎臓EPO濃度は12時間以降に, それぞれ, 有意に高い値となった.コルチゾル濃度と腎臓EPO濃度は4mg/LDO群よりも高くなった.肝臓ATP含量は1日目から減少し, AMP含量は3日目に増加したため, 同AEC値は3日目から有意に低くなった)<BR>実験IIでは, 2001年の7~8月 (夏季) と12月 (冬季) に東京湾と気仙沼湾の奥部および仙台湾東部海域で捕獲したマコガレイの腎臓EPO濃度を調べた.その結果, 冬季には上記3ヵ所で捕獲した魚の値に差はなかったが, 夏季では, 東京湾および気仙沼湾の魚に, 仙台湾に比べ有意に高い値が認められた.<BR>以上の結果は次のことを示唆する: (i) マコガレイ腎臓のEPO濃度は4mg/L以下のDOに, 半日から1日間, 曝されれば有意に上昇する.当該変化は海域の貧酸素化の程度を反映する.海水の貧酸素化は魚に強いストレス反応を誘起すると共に, 体内のエネルギー量を著しく減少させる.(ii) 腎臓Epo濃度は, 魚が一旦貧酸素環境に曝されるとDOが回復しても2, 3日間は高い状態にあり, 捕獲ストレスや汚染等による影響も受けにくいと考えられるため, 海水の貧酸素化を捉える指標として有望である.(iii) 東京湾や気仙沼湾の奥部で夏季に捕獲されたマコガレイは, 少なくとも半日から1日, DOが4mg/L以下の貧酸素環境に曝されていた可能性が高い.

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参考文献 (33)*注記

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