ヒト疾患モデルとしてのブタの前胃部潰瘍

書誌事項

タイトル別名
  • Gastric Ulcer in Pigs as an Animal Model of Human Disease
  • ヒト シッカン モデル トシテノ ブタ ノ ゼンイブ カイヨウ

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説明

ブタ胃潰瘍を生態学, 臨床および病理学的見地から調べ, ヒト胃潰瘍のモデルとしての利用性を検討した。一農家からの出荷ブタでは高率 (50%) に前胃部糜爛・潰瘍がみられたが, 他の養豚場のものでは発生をみなかった。前者の群でのの高率の発生に育成, 肥育用飼料の粒度の微細さが関係していることが, 粒度の異る飼料でブタを飼育した実験から示唆された。実験群の経時的観察から, 前胃部病変が2ケ月齢の早期から出現し, 6ケ月齢以上では慢性潰瘍になることが知られた。ブタ胃潰瘍とヒト胃潰瘍はともに胃液非分泌部でかつ消化液に触れる機会のある場所であるという消化性潰瘍の共通点は指摘できたが, 潰瘍発生部位はヒト胃潰瘍と全く異っていて, その発生機序は異るものと考えられた。しかしながら, 慢性経過をとり, その場合の組織所見は潰瘍壁に四層構造を認め, 血管神経病変を伴うなど, ヒト慢性潰瘍の病理発生の一面の比較研究に利用し得ることが考えられた。さらに, 飼育の粒度を変えることにより疾病の経過を調節できる可能性があり, 他の人工的な方法による実験胃潰瘍よりも有利な点もあると考えられた。

収録刊行物

  • Experimental Animals

    Experimental Animals 28 (2), 287-295, 1979

    公益社団法人 日本実験動物学会

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