酵母添加スターターを用いるカマンベールチーズ製造に関する研究(第5報)

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on Camembert Cheese Manufacture Using Yeast Flora (5)
  • 酵母添加スターターを用いるカマンベールチーズ製造に関する研究(第5報)チーズおよび生乳中のGeotrichum candidumの形態学的特徴と芳香生成
  • コウボ テンカ スターター オ モチイル カマンベール チーズ セイゾウ ニカ
  • ─チーズおよび生乳中の<i>Geotrichum candidum</i>の形態学的特徴と芳香生成─
  • —Morphological Properties and Formation of Aromatic Compounds of <i>Geotrichum candidum</i> Isolated from Raw Milk and Cheese—

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説明

1. 酵母Geotrichum candidumと類推される菌株 (Ga, Gb, Gd, Gh, Gi, Gk, Go, Gy) をフランス国各地および日本産チーズと生乳より単離し, これらの形態学的特徴と培養特性を調べた。標準菌株としては市販のGeotrichum candidum (Geo) を用いた。その結果各種の培地および培養方法による形態学的相違から, これらの菌株を三つのタイプに分けることができた。<br/> 2. PDA培地での平板培養の形態学的特徴から菌株は三つに分けられた。Geo, Gh, Gi, Goの葉状体は白いクリーム色で幾分フェルト状を示した。分生子の形成は少なく, 液体培地で培養したGkに比べて菌糸体を多く造った。毛足は長い (タイプ1)。Ga, Gb, Gd, Gyはタイプ1とタイプ3の中間型である (タイプ2)。Gkの葉状体は白色で酵母様を示した。分生子と分節型分生子を豊富に造るが菌糸体は少ししか造らなかった。葉状体の毛足は短い (タイプ3)。Gdはクライオユニット付き走査型電子顕微鏡で観察した。<br/> 3. ガスクロマトグラフ質量分析器で得た各菌株の芳香成分クロマトグラムを比較し, 菌株の相同性を推定した結果, 近似のクロマトグラムを示したのはGeo, GdとGiであった。このことは, 3菌株に共通した代謝系が存在することを推測させた。Gdの芳香成分としてアセトアルデヒド, エタノール, 酢酸エチル, イソブチルアルコール, エチルアセトン, イソアミルアルコール, 活性アミルアルコール, フェニールアセトアルデヒド, フェニールエチルアルコールを同定した。<br/> 4. Gkの発する芳香について香料標品のクロマトグラムと比較したところ, リンゴ様芳香を産生していると推定された。Gkの芳香成分は, Gdでの成分以外にプロピオン酸メチルエチル, 吉草酸エチル, 吉草酸-2-メチルエチル, 吉草酸-3-メチルエチル, 酢酸ブチルメチル, α-メチルイソクロトン酸, チグリン酸, ヒドロキシメチル吉草酸エチル, 酢酸フェニールエチルを同定した。<br/> 5. Gd, Gi, GkとGhを用い, 大阪府立農芸高等学校乳加工場および家庭でカマンベールチーズとシャウルスチーズを製造し, チーズの品質におよぼす影響を比較した.また, 官能試験もおこなった。その結果, Gdの方がGiやGkに比べ, 風味や組織に優れた品質を与えることが判明した。Gkはリンゴ様芳香を与えた。Ghは植菌量の幅が大きく, シャウルスチーズ用に適していた。菌株Gdはカマンベールチーズ製造に最も有用な菌株であることが明らかとなった。

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