日本型食生活の栄養学的検討(1)

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抄録

和食(日本型食生活)とは何か?<BR> 1980年の「農政審議会答申」で、欧米諸国と比較して優れたバランスを持つ日本の食生活を、日本型食生活として定着させる提言が行なわれた。1983年には「食生活懇談会」から望ましい日本型食生活として、1)総熱量の摂り過ぎを避けること、2)多様な食物をバランスよく食べること、3)お米の基本食料としての役割とその意味を認識すること、4)牛乳の摂取に心がけること、5)脂肪、特に動物性脂肪の摂り過ぎに注意すること、6)塩や砂糖の摂り過ぎには注意すること、7)緑黄色野菜や海草の摂取に心がけること、8)朝食をしっかりとること、をあげている。さらに、1985年に策定された厚生省「健康づくりのための食生活指針」は、あるべき日本型食生活として、主食、主菜、副菜をそろえた1日30品目の摂取を強調した。<BR>「和食」は、主食であるご飯、味噌汁、おかずから構成され、魚介・野菜・乾物などの素材そのものの風味を引き立たせるように、醤油・砂糖・塩・酢などで調味した淡泊な味を特徴とする日本で発達した伝統的な料理の総称と定義できる。しかし、「和食」と日本人の食事は一致しておらず、時代、地域、社会階層によって差があり、調理法も中国などから伝来してきたものが多い。さらに、現代日本人は中国料理、イタリア料理、フランス料理など種々雑多な食事を摂っている。このため、医学・栄養学的な見地からは、理想とする和食(日本型食生活)と現代日本人の食生活とは大きく乖離していることに留意が必要である。<BR>不足が危惧される栄養素<BR>和食は、多様な食物をバランスよく摂取することに特徴があるため、不足の危惧される栄養素は少なく、欧米からは健康食と高く評価されている。国民栄養調査で毎回指摘されるカルシウム摂取不足は、乳製品の適度な摂取、小魚介類、大豆類、青野菜・海藻の利用によって補うことが可能である。カルシウム以外にも、偏食によってミネラル・微量元素として鉄、亜鉛、銅、マグネシウムなどの摂取不足が生ずる可能性がある。ビタミン類では、野菜・果物の摂取不足により、ビタミンCの不足が生じやすい。1972-3年に白米と清涼飲料水の多量摂取と過剰な身体活動を行っていた若者に、ビタミンB1欠乏症(脚気)の集団発生があった。白米を玄穀・雑穀に変えること、肉の適度の摂取により防止が可能である。また、必須アミノ酸の一つであるリジンはブドウ糖の代謝促進やカルシウム吸収に関与するが、精白米では含量が少なく、大豆・大豆食品を併せて摂取する必要がある。<BR>過剰が危惧される栄養素<BR> 近年、日本人は欧米人より肥満が軽度であるにもかかわらず、糖尿病が急増していることが問題となっている。世界保健機構や世界食糧農業機関は、砂糖など単純糖質の過剰摂取は肥満、高中性脂肪血症、糖尿病を増加させる可能性があると警告を発しており、総摂取エネルギーの10%以下に制限すべきと勧告している。日本の糖尿病増加の主原因は、身体活動不足による相対的な栄養過剰摂取と考えられるが、白米や単純糖質を多く含む菓子、清涼飲料水の摂取による食後血糖の上昇(Glycemic load)の関与も考えられるため、白米やうどんなどの高Glycemic load食の食べ過ぎにも注意が必要である。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205519489536
  • NII論文ID
    130006945917
  • DOI
    10.14879/nnigss.54.0.31.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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