論文撤回:炎症性サイトカイン誘導MMP-3はマウスiPS細胞由来象牙芽細胞の増殖を制御する

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  • Retraction: Inflammatory Cytokine-induced MMP-3 Regulates Proliferation of Odontoblast-like Cells Derived from Induced Pluripotent Stem Cells

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 目的: これまでにわれわれは, マトリックスメタロプロテアーゼ (Matrix metalloproteinase: MMP) -3がラットの歯髄創傷治癒に関与すること, さらに, 純化したマウス胚性幹細胞 (ES細胞: Embryonic stem cell) 由来象牙芽細胞において, 炎症性サイトカイン誘導MMP-3が象牙芽細胞の増殖を制御することを報告した. 本研究では, われわれが新たに確立したマウス人工多能性幹細胞 (iPS細胞: Induced pluripotent stem cell) 由来の純化象牙芽細胞を用いて, 炎症性サイトカインミクスチャー (CM: IL-1β, TNF-αおよびIFN-γ) 誘導MMP-3の新規な生理的役割を検討した. <br> 材料と方法: セルソーターを用いてα2 integrin陽性マウスiPS細胞由来象牙芽細胞を98%以上高純度化し, CMを添加し, RT-PCR法とウエスタンブロット法によりMMP-3 mRNAならびにタンパク質発現を評価した. MMP-3 siRNAを用いたMMP-3遺伝子のノックダウンにより, CMによる細胞増殖とアポトーシス細胞死の評価ならびにレスキュー実験を行った. <br> 結果: 低濃度CM添加群 (1, 3U) において, MMP-3遺伝子, タンパク質発現, 酵素活性ならびに細胞増殖の亢進が統計的有意 (p<0.05) に認められた. さらに, 低濃度CM添加群はMMP-3 siRNA処理により, 細胞増殖の抑制とアポトーシス細胞死が惹起され (p<0.05), リコンビナントMMP-3の添加でアポトーシス細胞死はレスキューされた. <br> 結論: CMは比較的低濃度ではマウスiPS細胞由来象牙芽細胞の増殖およびMMP-3の発現の亢進が観察された一方で, 高濃度CM添加群 (5U) では細胞増殖の低下とアポトーシス細胞死が惹起された. したがって, これまで組織破壊に関与すると考えられてきたMMP-3が, 歯髄の炎症時における象牙芽細胞の増殖と抗アポトーシス作用を制御することで, 歯髄創傷治癒に関与する可能性が示唆された.

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