変形性膝関節症における疼痛評価に関する検討

Description

【目的】変形性膝関節症(膝OA)に対する疼痛評価は、主訴である動作時痛をいかに捉えるかが重要である。疼痛評価としては様々な尺度が開発され検討されてきたが、一般的な疼痛評価としてVisual Analogue Scale (VAS) が用いられることが多い。膝OAは進行性退行性疾患であることから、治療介入においては疼痛の経時的変化とその特徴および能力低下との関連を適切に評価する必要がある。膝OAの疾患特異性を考慮してRejeskiら (1995年) が開発したKnee Pain Scale (KPS) は、VASにみられる疼痛の強度に加えて動作時の疼痛頻度を測定しうる尺度である。そこで我々は、膝OAにおける理学療法の効果検証としての示唆を得ることをねらいとし、KPSの信頼性と妥当性の検証、ならびにKPSがVASよりも疼痛の変動傾向を反映しうるかを発症後期間との関連から比較検討したので報告する。【方法】対象は膝OAと診断され外来通院している325名のうち、欠損値のない245名(男性82名、女性163名、平均年齢72.0±8.3歳)であった。調査項目は、身長、体重、診断名、発症後期間、障害側、日本整形外科学会OA膝治療成績判定基準、VAS、KPSであった。解析は、KPSの構成概念妥当性を検討するために開発者が提起した4因子斜交モデルを措定し、確証的因子分析により適合度を検討した。次に疼痛の変動傾向を反映しうるかを検討するために発症後期間を1年未満、1から3年、3から5年、5年以上の4群に分け、VASならびにKPS各因子の標準化得点について一元配置分散分析(ANOVA)を行った。【結果】KPS4因子斜交モデルの適合度指標はCFIが.984、TLIが.979と統計的な許容水準を満たした。4つの下位疼痛尺度(頻度/起居、頻度/歩行・階段、強度/起居、強度/歩行・階段)のクロンバックα信頼性係数は.83から.89であった。ANOVAの結果ではVAS得点と発症後期間との間に統計的な有意差は認められなかったものの、KPS4因子の得点と発症後期間との間には、強度/歩行・階段を除く3因子において有意差が認められた(p<.05)。発症後の4期間ごとに各因子の得点を比較した結果、5年以上で統計的な有意差が認められ(p<.05)、多重比較の結果、強度/歩行・階段よりも頻度/起居が有意に高かった(p<.05)。【考察】開発者であるRejeskiらのCFIは.91であるが、今回の確証的因子分析の結果においてはむしろ高い適合度を示したことから、KPSが本邦でも使用可能であることが示唆された。また疼痛と発症後期間との検討から、KPSは現在汎用されているVASに比べ、疼痛の変動傾向をより反映する可能性が示唆され、また5年以上で疼痛の強度より疼痛頻度の変動が大きいことが示された。以上の事から、KPSは膝OAにおける理学療法の効果検証において有効な指標になりうると考えられた。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564151040
  • NII Article ID
    130004576786
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.159.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top