Isokinetic Closed Kinetic Chain による下肢筋力評価の有用性
説明
【はじめに】前十字靱帯 (以下 ACL ) 再建術の発展に伴い、術後リハビリテーションの安全な方法として CKC が注目されている。ACL 再建術後のリハビリテーションは、ACL 機能の再獲得とともに ACL に負荷をかけずに下肢筋力増強を行い、安全で正確な筋力評価を行うことが重要である。しかし現在は、ACL に負荷のかかる開運動連鎖(以下 OKC )による評価訓練が一般的である。本研究は、OKC と 閉運動連鎖(以下 CKC )の下肢伸展筋力の測定を行い、両者を比較して CKC による新しい評価訓練法を探るものである。<BR>【対象と方法】20 歳から 23 歳の健常若年女性 10 人 ( 21.2±0.7 歳)を対象とした。 OKC は CYBEX 6000 を用いて、両膝関節伸展、屈曲筋群の等速性筋力測定を行った。 CKC はサイクロイド曲線を利用した閉運動連鎖型評価訓練機( オージー技研特注 )を用いて、アームの回転速度 40 deg / sec に設定して両側の等速性下肢伸展筋力の測定を行った。被験者は股、膝関節屈曲位から伸展方向へフットプレートを最大筋力で蹴り続け、この蹴る力(以下、足部出力)を計測するためフットプレートに 3 軸ロードセルを設置した。 PCD-300A とノートパソコンを用いて 3 方向の足部出力を記録し、これらの分力から足部の矢状面での出力とその方向を計算で求めた。運動はデジタルビデオカメラで側面から撮影し、その映像をパソコンに取り込んだ。 取り込んだ動画を、NIH Image Ver.1.62を用いて静止画に分割し、静止画上でモーメントアーム長を求めた。足部出力とモーメントアーム長から各関節トルクを求め、 股、膝関節伸展、足関節底屈方向を正、逆方向を負のトルクとし、 3 関節のトルクの合計を CKC の下肢伸展筋力とした。<BR>【結果】本研究で得られたトルクパターンは OKC では伸展、屈曲筋群ともに従来からの報告のパターンを呈し、 CKC では被験者によって様々なパターンを呈した。ピークトルク値は OKC では 伸展筋群 141.7±30.3 Nm、屈曲筋群 64.6±13.6 Nmであった。CKC では 276.4±91.5 Nm であった。膝伸展筋群とCKC の相関係数 0.811、膝屈曲筋群とCKC の相関係数 0.751で非常に高い正の相関を示した。<BR>【考察】本研究の設定条件で測定及び解析することにより、CKC の下肢筋力の算出が可能となった。また、CKC とOKC のピークトルク値の間に高い正の相関関係を認めた。CKC では、大腿四頭筋とハムストリングの共同収縮のため膝関節が安定し、 ACL にかかる脛骨前方引き出し力は減少または完全に打ち消される。またレバーアームを蹴る力は被験者が自在にコントロールできるため、 安全に下肢伸展筋力の測定が可能であると考えられる。よって閉運動連鎖型評価訓練機を用いることで、これまで困難であった膝疾患の理想的な下肢筋力増強と安全で正確な機能評価の可能性が示唆された。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2003 (0), A0894-A0894, 2004
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205564359296
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- NII論文ID
- 130004577793
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可