中学校家庭科における北海道産米粉の教材としての有効性の検討

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タイトル別名
  • Examination of effectiveness of rice powder made in Hokkaido as a teaching material on homemaking education at the junior high school

抄録

【研究の背景および目的】食の欧米化・多様化が進むにつれ,日本人は特に米を食べなくなってきている。食文化の基盤である米の持つ良さを見直し,食糧自給率の低い食糧を米で補うとともに米の特性を生かした食育を行い,米の消費量の拡大を通じて食糧自給率の向上を図っていく必要がある。最近では,農林水産省が行っているFOOD ACTIONの活動の一つである米粉倶楽部など,米粉を活用して米の消費を拡大していく取り組みが今後に期待されている。一方,米粉の特性や利活用を目的とした研究はなされているが,学校教育における米粉を取り入れた実践はまだ少ない。また,米粉は未だ流通市場に十分に普及しておらず,簡単に入手できない場合が多く,価格も小麦粉に比べると比較的高価である。消費者が家庭で米粉を扱うことに対しての関心は高いが,米粉の扱い方や用いた調理方法についてもあまり知られていないことが,米粉普及が進んでいない一因となっていると考える。平成20(2008)年改訂の中学校学習指導要領の「技術・家庭」 家庭分野においては,地域の食材を生かした日常食の調理や地域の食文化に関して地域の食材の良さを理解すること等が示されている。北海道は日本有数の米の産地であり,食文化として,生産から消費まで食材に触れながら学習できる教材として,米粉は適している教材であると考える。そこで本研究では,北海道産米粉の普及を目指した食育の提案の視点から,中学校「技術・家庭」家庭分野における,米粉を用いた教材の研究・開発を行い,その有効性について検討することを目的とした。<BR> 【方法】中学校「技術・家庭」 家庭分野の調理実習において従来から小麦粉を用いたレシピを米粉で代替したり,新たに米粉特有の調理特性を生かした調理について,米粉を用いることによって調理工程や方法がどのように変化するか,食味・食感の変化も踏まえた上で検討した。また,従来のレシピと米粉を活用したレシピの食味・食感・カロリー・食糧自給率等について比較検討も併せて行った。その上で,上川管内技術・家庭科研究会の教員の協力のもと,平成22(2010)年9月にスキルアップ研修会において,教材としての有効性について検討した。<BR> 【結果および考察】米粉調理特性としては,吸水が良くとろみづけに向いている点,グルテンができないため扱いやすい点,揚げ衣に適している点,おいしさが長持ちする点,もちもち・パリパリ・とろとろな食感になる点等の特徴がある。米粉を小麦粉の代替としてだけ考えるのではなく,米粉だからこそできる調理特性を重視することで,今後はさらに米粉の活用方法が広がっていくと考えられた。米粉を活用したレシピとして,_丸1_とろみづけ,_丸2_焼く,_丸3_オーブンで焼く,_丸4_揚げる,_丸5_冷やす,_丸6_もち・団子という観点から,16種類のレシピを開発した。スキルアップ研修会では,旭川の近郊でとれる食材で作った「旭川餃子」,小麦粉の代わりに米粉を用いた「鮭のムニエル」,皮にもカスタードクリームにも米粉を利用した「簡単シュークリーム」を提案し検討してもらった。教材としての有効性について「ある・少しある」としたのは,それぞれ66%,87%,66%となった。提案したすべてにおいて6割を超える教員から高評価を得たが,調理方法による米粉の食感の違いや調理時間や工程の複雑さについては今後の課題が残った。中学校教員の米粉に対する関心は高く,米粉だけでなく調理で扱う全ての材料に関して,地産地消の意識を持つことで,教材として扱う意義が強くなることも指摘された。また,調理実習の中で,ただ単に米粉を扱うのではなく,米について学習する題材にも適しているという意見が得られた。その一方で,自給率や米粉に関しての情報やデータの必要性があげられるなど,今後は,指導に当たる現場教員に対しても,適切な情報提供・研修の機会などが必要になると予想された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595542144
  • NII論文ID
    130006962611
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.80.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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