マウス舌粘膜上皮細胞障害を指標にした炭素イオン線のRBEの評価

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  • Evaluation of RBE of carbon-ion beams for epithelial thickness on mouse tongues

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抄録

【目的】我々は低LET放射線照射後の口腔粘膜障害に対するD-メチオニンの放射線防護効果を報告している。新たにD-メチオニンに対して重粒子線治療による粘膜炎および唾液腺障害の防護効果の検討を計画したが、これまで口腔内正常組織障害に対する炭素イオン線のX線照射に対するRBEの報告がなかったため本研究では、マウス舌粘膜上皮細胞障害を指標として炭素イオン線のRBEを検討した。 【方法】C3Hマウスの頭頸部に対し、炭素イオン線(放医研HIMAC: 290MeV/u, 6cm-SOBP, LET 50kev/μm)、X線(150kV, 20mA) の局所照射を各々5日間行い、最終照射から2~6日後に舌・唾液腺を摘出した。摘出組織は、ホルマリン固定後標本を作製しHE染色した。マウス頭頸部への照射により、舌粘膜上皮細胞には菲薄化が観察され、これを指標としてRBE(Dx/Dc)を算出した。舌の断面組織を顕微鏡撮影し舌粘膜上皮細胞の厚さを画像解析ソフトにより計測して評価した。 【結果】低照射線量では、舌粘膜上皮細胞は、むしろ肥厚傾向が観察された。照射最終日から6日後の検討で舌粘膜上皮細胞の障害が確認された線量域では、照射後経時的な舌粘膜上皮細胞の菲薄が起こっていた。炭素イオン線、X線分割照射を行い、舌の潰瘍が肉眼で明確に確認される6日後に舌を摘出し、粘膜上皮細胞厚を計測したデータよりRBEを算出した。舌粘膜上皮細胞の障害が軽度~中等度(epithelial thickness: ≧30% of control)までは、RBE値は、ほぼ一定で1.82-1.85であったが、障害が激烈になるにしたがってRBEは徐々に上昇し、最高2.10まで達した。舌粘膜上皮細胞厚が、非照射群の50%に減少する線量は、X線、炭素線で各々29.1Gy、16.0Gyであり、これらの値からRBEは1.82と算出された。 【結論】今回の舌粘膜上皮細胞の菲薄化を指標として求めた炭素イオン線分割照射におけるRBE値は、正常組織(皮膚・腸)の急性期反応を指標としたこれまでの報告と近い値であり妥当と思われた。これまで舌粘膜上皮細胞厚を指標としたRBEは報告されておらず、今回の検討結果は評価できると考える。

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