食品油脂の物性とおいしさ
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- 佐藤 清隆
- 広島大学大学院生物圏科学研究科
抄録
1. はじめに<br> 油脂は、糖質(炭水化物)や蛋白質と並ぶ重要なエネルギー源であると同時に、代謝により生じる生体必須の生理活性物質の供給源である。この栄養的な機能に加えて、油脂はそれを含む食品のおいしさとも密接に関係している。たとえば料理に油脂を少量添加するだけで、微妙に味が変わることは良く知られている。普通に食されている精製食用油それ自身には特別な味覚はないので、油脂が食品のおいしさにかかわる場合には、油脂と味覚にかかわる成分との間に特別な相互作用が働いている。<br>最近、油脂は健康との関連できわめて高い関心を集めている(1)。肥満の原因として油脂を忌避する傾向が強いものの、『体に良い油』や、健康増進のための脂溶性栄養物質の摂取には油が不可欠であるという認識も広がっている。本講演では、さまざまな社会的ニーズに合致した『食品のおいしさ』の追求を考察した上で、『食品のおいしさ』を支える食品油脂の物理的な性質を考察したい。<br>2. 食品油脂に対する社会的ニーズ<br>現在、食品油脂に対する社会的なニーズを整理すると、表1のようにまとめられる。これらのニーズを満足させた食品を製造するためには、原料となる油脂素材の精製や分離・抽出や、生物学的・化学的な方法による脂肪酸組成の変調などの技術開発が必要である。しかしそれだけでは不十分であり、社会的ニーズと「おいしさ」を合致させるための技術開発も必要である。そのためには次節に示すように、油脂食品のおいしさと物性的な機能の関係を明らかにすることが望まれる。<br>3. 食品油脂の物性と機能性<br> チョコレート,マーガリン、ショートニング、ホイップクリームなどの食用加工油脂では、高融点・低融点油脂、乳化剤、フレーバー、水分などを混合・融解・凝固して、さまざまな機能物性を発現させている。その中で重要な役割を果たす油脂の物性としては、一般的にシャープな口どけ、硬さ-柔らかさ、構造安定性、スナップ性、展延性、均質なテクスチャー、分散性、ホイップ性、保水性、徐放性などがあげられる。<br> 図1に食品用油脂の機能的物性を、食品の物理状態ごとに整理して示す。バルク状態には、固体(チョコレートなど)とゲル(ショートニングなど)があり、エマルションには水中に油滴が分散したoil-in-water(O/W)エマルションと、逆の分散関係にあるW/Oエマルションがある。前者ではクリーム、後者ではマーガリンやファットスプレッドが代表的な製品である。さまざまな油脂の物性のなかでどれが重要となるかは、食品がどの物理状態にあるかに依存する。また、食用油脂が単独で使用されるのではなく、澱粉や蛋白質に添加される場合には、澱粉-油脂や蛋白質-油脂などの成分間相互作用が考慮されねばならない。<br>バルクの固体状態では、油脂結晶の形態や密度、融解挙動、さらには製造工程における粘弾性が重要となる。(中略)<br>本講演では、「食品油脂の物性とおいしさ』に関係した下記の話題を考察したい。<br>(1)トランス酸代替問題と物性(本文略)<br>(2)構造脂質と物性(本文略)<br>(3)食品デリバリーシステムと物性(本文略)<br>全文は日本調理科学会ホームページで公開http://wwwsoc.nii.ac.jp/jscs/meeting.html
収録刊行物
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- 日本調理科学会大会研究発表要旨集
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日本調理科学会大会研究発表要旨集 18 (0), 191-191, 2006
日本調理科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205689181952
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- NII論文ID
- 130007010028
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可