積雲発生初期のシーディングによる豪雨抑制効果と降水促進リスクに関する数値実験

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タイトル別名
  • Numerical experiment on the mitigating effect on the heavy rains and rainy promotion risk by cloud seeding in the early stage of cloud development

抄録

近年,地球温暖化の進行に伴う局地的集中豪雨の多発や台風の強大化など,異常気象災害が地球規模で深刻化することが危惧されている.我が国でも集中豪雨による土砂災害,交通網のトラブル,浸水被害など多くの深刻な被害を受けており,極端な降水現象に対する防災対策の必要性が高まっている.また,現在では降水現象を人為的に操作する手法としてクラウド・シーディング(以降,シーディングと呼ぶ)を利用した人工降雨の研究が世界各地で行われている.シーディングとは雨粒の「種(シード)」になるものを雨雲の中に散布することで雲粒を雨粒に成長させ,人工的に雨を降らせる技術である.シーディングの研究の目的の多くは渇水や旱魃対策,水資源の確保等のために降雨を促進させるものであるが,既往研究では,積雲発達期のシーディングによる豪雨抑制効果が確認されており,シーディングの降水抑制手法としての可能性が示唆されている.<br>そこで本研究では,積雲発生初期におけるシーディングに着目してその豪雨抑制効果について検討した.また,シーディングによる豪雨促進リスクの大小を定性的・定量的に評価するため,複数の豪雨事例についてメソ気象数値モデル(WRF)を用いて数値実験的なシミュレーションを行った.<br><br>その結果,シーディングにより広範囲に強雨域が抑制されることや,時間降雨強度が抑制されることを確認することができた.<br>さらに,全事例合計するとシーディングを行ったケース数は240ケースあり,その中で閾値を設けたとき,積算最大降水量が抑制されたケースは83ケース,促進されたケースは29ケース,1時間最大降水量が抑制されたケースは81ケース,促進されたケースは27ケースであり,積算最大降水量が抑制される可能性は約35%,促進される可能性は約12%,1時間最大降水量が抑制される可能性は約34%,促進される可能性は約11%となった.<br>また,シーディングを行う雨雲の高度と霰の混合比に大きな差が見られ,豪雨を促進する要因の1つである可能性が示唆された.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205711937280
  • NII論文ID
    130005491879
  • DOI
    10.11520/jshwr.28.0_100065
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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