胎盤絨毛組織の透過型および走査型電子顕微鏡による所見について

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タイトル別名
  • Scanning and Transmision Electron Microscopic Studies on Human Term Placental Villi
  • タイバンジュウモウ ソシキ ノ トウカガタ オヨビ ソウサガタ デンシ ケンビキョウ ニ ヨル ショケン ニ ツイテ

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抄録

従来の透過電子顕微鏡の性能は飛躍的に発展してきた. さらに直接生物組織のあらゆる表面微細構造および立体構造を観察, 明らかに出来る走査電子顕微鏡の利用分野に, 医学, 生物がとりいれられる様になった. しかし約10年を経過したに過ぎないが近年, 試料作製技術の急速な進歩につれて, 軟組織の表面観察をも可能になり, 組織形態学上において有能な存在になりつつある. 今回, 我々は母児間の物質交換をつかさどる部位である胎盤絨毛組織を観察し, 表層上の形態および組織構造を検討した. 1) 絨毛表層の走査電顕所見は胎盤絨毛諸所にくびれやしわをもつ絨毛突起が, 全体として美しい樹枝状の構築をなしており, その表面はmicrovilliによってビロード状に見える. さらに透過電顕を見るとSyncytium細胞の遊離縁に於てPinocytosisを思わせる小胞の開口像および中に微細顆粒を容れた空胞が観察できた. microvilliは貧弱で部位によってはほとんど観察できない所もある. 2) 細胞質内に遊難するRNP顆粒はSyncytium細胞においてLanghans細胞よりも多い. したがってLanghans細胞はSyncytiurn細胞よりも明るく, Syncytium細胞において顆粒性小胞体は細胞質内にびまん性に存在するのに反しLanghans細胞においてそれは粗に認められる, 妊娠末期においても各細胞間に明瞭な細胞膜構造および, これに附着するdesmosomeの構造を有するLanghans細胞が認められるが, Langhans細胞よりSyncytium細胞への移行と思われる構造を見い出すことは出来なかった. Syncytium細胞は全く合胞性であって, 細胞膜構造は認められないが, Syncytium細胞層にはSyncytium knotは認められる. 3) 厚さ約300mu前後の基底膜はSyncytium細胞層と直接する割合は大きくなり. 他の一般上皮の場合よりも厚さの変化が著しい. 4) 絨毛間質は間質細胞, 膠原線維, などの固有成分およびそれ以外の雲状液状物でみたされている. 5) 胎児側毛細血管は内皮細胞, 内皮細胞外側の薄い基底膜とさらにその外側の間質細胞性と考えられるpericyteが認められた. 今後, 臨床像により組織および形態学的所見の変化, または特徴を検討考察することは出生前医学の分野でも必要と考えられる.

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