「すきとほつたほんたうのたべもの」を「あなた」へ : 宮沢賢治『どんぐりと山猫』の深層批評

書誌事項

タイトル別名
  • "Something Real and Pure to Eat for You" : The Latent Structure of Kenji Miyazawa's "Donguri-to-yamaneko"
  • スキ ト オッタホントウ ノ タベモノ オ アナタ エ ミヤザワ ケンジ ドングリ ト ヤマネコ ノ シンソウ ヒヒョウ

この論文をさがす

抄録

童話集『注文の多い料理店』の「序」文には、「わたくしは、これらのちいさいものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。」とある。この童話はその願いを実現しようとしたもの、それにはこの作品のパースペクティブを日常的遠近法で読むのでなく、その向こう、永劫の虚無を定点にして読まれなければならない。そのためには大森哲学の「知覚されたものがその人にとっての真実」であるという知見に立つ必要がある。この童話集がそれを要求しているというのが、私見である。また童話にもジャンル論が必要で、物語童話と小説童話とが峻別されなければならない。この作品は後者、プロットの末尾は作品の末尾ではない。深層批評が求められ、そこは絶対的なものの前で全てが相対の海に化すべく<仕掛け>られているのである。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 59 (2), 32-42, 2010

    日本文学協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ