日本の犯罪は減ったか? 減ったとすれば,その原因は何か? (課題研究 犯罪率の低下は,日本社会の何を物語るのか?)

書誌事項

タイトル別名
  • Has the Number of Crimes Dropped? What Caused the Reduction? (<Special Issue>What Does 'the Decline in Crime Statistics' Tell about the Japanese Society?)
  • 日本の犯罪は減ったか? 減ったとすれば,その原因は何か? : 犯罪統制のネット・ワイドニングと刑事訴追の重点主義化
  • ニホン ノ ハンザイ ワ ヘッタ カ? ヘッタ ト スレバ,ソノ ゲンイン ワ ナニ カ? : ハンザイ トウセイ ノ ネット ・ ワイドニング ト ケイジ ソツイ ノ ジュウテン シュギカ
  • 犯罪統制のネット・ワイドニングと刑事訴追の重点主義化
  • Net-Widening of Crime Control and A New Priority System of Prosecution

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抄録

認知件数の増加を根拠に治安の悪化を懲漁する論者もいる.しかし,ほとんどの犯罪学者は,認知件数の増加,即,治安の悪化であるとは考えない.ラベリング論の洗礼を受けた犯罪学は,犯罪統計は,特定の目的のために収集し,編集されたデータであることを前提に議論する.したがって,各省庁の白書・青書は,広義の行政の仕事ぶりを示す指標であると考えた方がよい.本稿では,「犯罪統制側の活動方針の変化が刑法犯認知件数の増減を規定している」との仮説に基づき,1998年から2008年の認知件数の増減をどの程度まで説明できるかを実験した.犯罪認知件数の増加と体感治安の悪化は,警察体制の強化(警察官の増員と人口負担の軽減)と裁判員裁判シフト(重点主義による負担軽減)の正当化根拠として機能した.しかし,膨大な人的・物的な資源の投入を必要とする「大きな刑事司法」構想は頓挫した.そこで,過剰負担の軽減や収容の適正化を根拠に,「前裁き(まえさばき)」やダイヴァージョンを利用して,肥大化した刑事司法システムの枠組みは維持しながら,現実の負担を調整する局面に入った.この方針変更のアウト・プットが認知件数の減少であった.

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