効率的なチョクラルスキー法による太陽電池グレードのシリコン成長(<小特集>Si系単結晶・多結晶)

  • Lan C. W.
    Department of Chemical Engineering National Taiwan University
  • Hsieh C. K.
    Sino-American Silicon (SAS) Products Inc. Science-Based Industrial Park
  • Hsu W. C.
    Sino-American Silicon (SAS) Products Inc. Science-Based Industrial Park

書誌事項

タイトル別名
  • Efficient Czochralski Solar-Grade Silicon Growth(<Special Issue>Single and Multi Crystalline Silicon)
  • Efficient Czochralski Solar-Grade Silicon Growth

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抄録

太陽電池の市場は年々増えつつある.約三分の一はチョクラルスキー(CZ)法により成長したシリコン単結晶である.太陽電池の市場価格は年約20%のペースで下がりつつあり,低コスト化が製造メーカーの存亡に関わるキーポイントとなっている.市場は,ウエハメーカーに対して高い生産力と低価格で高品質な材料の供給を求めており,市場競争力を維持するために,高効率的なCZ法による結晶成長が必要である.この解説では,CZ法による太陽電池グレードシリコンの生産における,いくつかの重要な問題について議論する.特に,ホットゾーン設計と複数回引き上げ(リチャージ)に焦点を当てる.本論文で提案する概念によって,実際に,6インチと8インチ直径の太陽電池グレードシリコンの生産に大幅なコストダウンと歩留まり改善が達成されている現状を紹介する.太陽電池用シリコン単結晶の製造におけるホットゾーン設計では,結晶の品質向上よりも低コスト化が重視される.コンピュータシミュレーションを駆使したホットゾーン設計では,低消費電力量と高速成長に焦点を合わせており,シミュレーションによって最適化された円錐状遮蔽リングを有するホットゾーンを使用することにより,実際に,高速成長,低消費電力化,アルゴンガス量およびカーボン部品(主にヒーターとサセプタ)の消費量削減に成功している.最適化された円錐状遮蔽リングより融液・結晶の熱輻射を遮蔽することで,熱収支保存則により高速成長が可能となる.実際,設計したホットゾーンを用いて,平均80mm/hの高速成長を実現している.加えて,この円錐状遮蔽リングの使用により,結晶成長界面における凹形状化の抑制や,原料の融解,結晶の冷却における低消費電力化などの改善も達成できる.また,ホットゾーン下部の断熱を達成することによっても低消費電力化を図ることができる.シリコン結晶成長の際,るつぼから融解した酸素は融液表面においてSiOの形で蒸発するが,このSiOがパーティクルとして結晶成長界面に付着すると多結晶化の原因となる.円錐状遮蔽リングは,ガスガイドの働きをもつため,アルゴンガスによって効率的にSiOガスを排除することができ,同時に,アルゴンガス消費量を削減することもできる.また,ホットゾーンへの付着が減少するため,カーボン部品の劣化が抑制され,部品寿命が大幅に長くなる.ホットゾーンの設計により,石英るつぼの温度を低温化することができる.これにより,石英るつぼ内表面におけるシリコン融液との反応によるパーティクル発生が抑制され,結晶成長の歩留まりが向上する.また,石英るつぼの低温化は,結晶中酸素濃度の減少をもたらし,太陽電池の効率を決定する重要なパラメーターである少数キャリアライフタイムの改善にもつながる.酸素と同様に,ライフタイムに重要な影響を与える炭素についても,アルゴンガスの流れをコントロールすることで,ヒーターやサセプタからの炭素汚染を抑制することができ,結晶中炭素濃度を0.03ppm未満に減少できる.連続チャージまたはバッチ式の複数回チャージ(リチャージ)を用いた成長は,石英るつぼのコストを大幅に削減できるとともに,原料の融解時間,結晶の冷却時間などが短縮でき,単位時間の生産高を大幅に向上できるため,低コスト化に有効である.太陽電池グレードシリコン結晶成長の主要なコストは,石英るつぼのコストであり,るつぼの品質と寿命がシリコン結晶成長の歩留まりに影響を与える.バリウムを石英るつぼの内表面にコーティングすることで,るつぼの品質と寿命を大幅に向上させることができる.2003年以来,太陽電池用シリコンインゴットの需要が急騰し,価格が上昇している.この状況は,シリコンメーカーがICから太陽電池産業へ関心を切り換える誘因となるが,同時に,太陽電池の価格も減少し続けているため,太陽電池用シリコンインゴットの生産はコスト削減という難局に直面することになる.この難局を乗り切るには,ホットゾーン改良が有効である.本解説では,ホットゾーン改良による高速成長の実現・低消費電力化・アルゴンガスおよびカーボン部品消費量削減などの可能性を示した.しかし,ホットゾーン改良の効果には限界があるため,近い将来,複数回および連続チャージ法の使用が必須になると予想される.

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参考文献 (27)*注記

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