ウンシュウミカンの芽の活性の季節的変化とそれに影響する要因

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タイトル別名
  • Seasonal Fluctuations in Bud Activity of Satsuma Mandarin and Some Influencing Factors
  • ウンシュウ ミカン ノ メ ノ カッセイ ノ キセツテキ ヘンカ ト ソレニ

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抄録

1. ウンシュウミカンの芽の活性の季節的変化を明らかにし, 併せてそれに及ぼす二, 三の処理の影響を調査することによって, カンキツの芽の休眠の機構を解明するとともに, 芽の活性の増大の可能性を探索した.<br>2. 鉢植えの早生ウンシュウ′興津早生′を供試し,GA及びカイネチン処理が新梢の伸長並びに伸長停止期に及ぼす影響を調査した. 両者の組み合わせ処理及びGA処理によって伸長が促進され, 伸長停止期が遅延されたが, それらの伸長停止期は対照のものに比べて約3か月遅かった. カイネチン処理による影響はわずかであった. 対照区及びGA区のそれぞれ一部の個体を, 10月21日以降25±2°Cのコイトトロン内に置いたところ,ともに新梢の伸長が促進され, 伸長停止期が遅延されたが, GA処理による伸長の促進及び伸長停止期の遅延は極めて顕著であった.<br>3. ウンシュウミカンの芽の活性の季節的変化を知るために, 圃場栽植の′持丸早生′の春枝を7月から翌年3月にわたって採取し, 切枝催芽法と芽培養法によって萠芽率の変化を調査した. それらの値からみた芽の活性の変化は, 夏期に最大を示し, その後急激に低下して秋または晩秋の時期に最低となり, 以後春に向けて時期の推移とともに再び増大する傾向を示した.<br>4. 芽の活性の変化に対するりん片の役割を明らかにするために, ′興津早生′の芽を5月下旬から11月下旬にかけて採取し, りん片を除去した芽とりん片をつけたままの芽をともに培養し, 萠芽率の変化を比較調査した.その結果, 実験期間のほとんどを通じてりん片除去芽の萠芽率が高く, とくに芽の活性の高い夏期における促進が顕著であった.<br>5. 芽の活性の季節的変化に対する内生ホルモン物質の役割を知るために, ′興津早生′のりん片除去芽を用いてMS基本培地にGA及びBAをそれぞれ単独に添加する区, 及びそれらとABAを組み合わせて添加する区を設け, 各培地上における新芽の伸長状況を比較調査した. 実験期間を通じてGAの添加により伸長が促進されたが, その効果は, 芽の活性の低下した秋期にはABAによって完全に打ち消された. BAの添加による効果はほとんど認められなかった.<br>以上の結果から, ウンシュウミカンの芽の活性の季節的変化が明らかとなり, その活性の変化には, GA,ABA及びりん片が密接に関係すること, 及び芽培養法における活性の増大には, GA処理とりん片除去が有効であることが認められた.

収録刊行物

  • 園芸学会雑誌

    園芸学会雑誌 55 (1), 1-7, 1986

    一般社団法人 園芸学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (10)*注記

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