メタン発酵消化液が養液土耕におけるトマトの生育と果実収量に及ぼす影響

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タイトル別名
  • Effect of the Digestion Sludge of Methane Fermentation on the Growth and Yield of Tomato Plants in Soil Culture
  • メタン ハッコウ ショウカエキ ガ ヨウエキドコウ ニ オケル トマト ノ セイイク ト カジツ シュウリョウ ニ オヨボス エイキョウ

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説明

本研究では,養液土耕において,消化液を液肥としてトマトを栽培した場合に,消化液が生育と果実収量に及ぼす影響について評価した.実験1では,マサ土を培地として,栽培開始前にNH_4^+を十分与えて,マサ土のNH_4^+の固定能を満たした場合(前処理あり)とそうでない場合(前処理なし)の効果を検討した.前処理ありでは,処理中期から末期にかけて強いNH_4^+過剰害が発現した.その理由は,マサ土のNH_4^+の固定能を満たした状態では,硝酸化成はある程度進行したものの,土壌中のNH_4^+濃度が極端に高くなったためと判断された.前処理なしでは,前処理ありに比べてNH_4^+過剰害は幾分軽減されたものの,良好な生育や果実収量は得られなかった.本実験では栽培履歴のないマサ土を供試したが,収穫まで消化液を与え続けてもマサ土のNH_4^+の固定能が満たされなかったため,与えたNH_4^+は土壌に固定され続けて,植物体によるNH_4^+の吸収が抑制されたものと考えられる.しかしながら,与えたNH_4^+が硝酸化成されたわけではないので,NH_4^+過剰害の軽減効果は小さかったものと理解できる.実験2では,畑土壌(褐色低地土)を培地として,トマトの生育および果実収量についてマサ土と比較した.マサ土では,与えたNH_4^+が固定される間は,根が直接吸収できるNH_4^+が低濃度になるため,NH_4^+過剰害が軽減された.しかし,マサ土のNH_4^+の固定能を超えてNH_4^+を供給し続けた場合には,土壌中のNH_4^+-N濃度は高くなったが,硝酸化成の進行が伴わないため,植物体にNH_4^+が多く吸収され,NH_4^+過剰害が発現した.その結果,生育は阻害され,果実収量は著しく低下した.消化液のpH調整に硝酸を用いた場合(硝酸補正)と硫酸を用いた場合(硫酸補正)を比較すると,前者のほうがNH_4^+過剰害は軽減されたものの,生育および果実収量は対照肥料区より劣った.畑土壌では,硝酸化成の進行によって,NH_4^+過剰害がかなり軽減された.硝酸補正では,尻腐れ果はほとんど発生せずに,正常果重や正常果1果重は対照肥料区に匹敵した.それに対し,硫酸補正では,地上部生育は良好であったが,収穫時になってNH_4^+過剰害を強く受けたため,果実収量は第1果房から第3果房にかけて次第に減少した.以上のように,消化液のpH調整に硝酸を利用することで,消化液のNO_3^-/NH_4^+比は改善されるので,消化液は畑土壌でのトマト栽培に十分利用できることがわかった.

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