2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)誘導体化を対象とした固相抽出による試料精製方法の開発

書誌事項

タイトル別名
  • A Method to Purify a Sample Derivatized with 2,4-Dinitrophenylhydrazine (DNPH) Using Solid Phase Extraction

この論文をさがす

説明

<p>アルデヒドおよびケトンを分析する際,2,4-dinitrophenylhydrazine(DNPH)による誘導体化は頻繁に用いられる。得られる誘導体は,吸光光度検出器またはLC/MSにより高感度分析が可能である。しかし,分析種に対して過剰なDNPHが必要となり,その大半は未反応のまま試料中に残存することとなる。これを分析機器内に導入すると,分析機の汚れなどの検出感度低下につながることが懸念される。したがって,分析に先立って未反応DNPHを除去することが重要となる。</p><p>そこで本研究では,DNPH誘導体化を施した試料を対象とした精製方法を開発することを目的とし,これを達成するための手段として,固相抽出(SPE)に着目した。DNPH誘導体は加水分解することが知られているため,検体中に水分が多く含まれる場合には,分析の定量性が悪化することが懸念される。したがって,まずホルムアルデヒドのDNPH誘導体(C1-誘導体)を用いて,加水分解速度の検討を行った。その結果,C1-誘導体は通常の操作時間内に20%以上が加水分解することが示されたため,誘導体回収率の低下を防ぐために,SPE精製操作を非水化することとした。</p><p>アセトニトリル溶媒中にてヘプタナールのDNPH誘導体化を実施し,得られた溶液をSPE精製に供した。固相には,Oasis系列(HLB Plus, MCX Plus, WCX Plus, MAX Plus, WAX Plus),Sep-Pak C18 Plus, およびSep-Pak PS-2 Plusを使用した。それぞれの固相について,精製の前後でDNPHの除去率および誘導体の回収率を算出した。用いた固相のうち,WCXのDNPH除去率は97.5%,誘導体回収率は103%となり,選択的精製に適していることが示された。</p><p>また,Gaussian09ソフトウェアによる密度汎関数理論(DFT)計算を実施し,上述の実験結果を支持する計算結果が得られるか確認した。計算の汎関数にはωB97XDを,基底関数には6-31G(d, p)をそれぞれ用いて,WCX-DNPH錯体とWCX-誘導体錯体について,錯体形成前後でのエネルギー変化を算出した。その結果,WCX-DNPH錯体の形成に伴うエネルギー変化は−41.41307 kJ/molであったのに対して,WCX-誘導体錯体では−30.31203 kJ/molのエネルギー変化が見られ,前者の方が11.10104 kJ/molエネルギー的に有利となった。このことより,量子化学的な観点からも,WCXが精製に適した固相であることが支持された。</p>

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 33 (5), 70-78, 2020-09-30

    社団法人 環境科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390004222629240576
  • NII論文ID
    130007919238
  • DOI
    10.11353/sesj.33.70
  • ISSN
    18845029
    09150048
  • 本文言語コード
    en
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ