沿岸域で用いられる数値モデルの再現性-潮汐流-

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タイトル別名
  • Reproducibility of Numerical Experiments for Environmental Assessment of the Coastal Ocean : Tidal Currents
  • エンガンイキ デ モチイラレル スウチ モデル ノ サイゲンセイ : チョウセキリュウ

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抄録

沿岸域における構造物の建設や様々な大規模な事業に際して,実施される環境影響評価では,数値モデルを用いた予測 実験が行われる.また,沿岸域での海洋現象を理解するための研究でも様々な数値実験が用いられてきた.その際,数値 モデルの結果は,観測値と比較することで,その信頼性を担保することが行われている.しかしその再現性の定量化につ いては十分議論されてこなかった.本稿では,特に潮汐流に関して,モデルの再現性について検討を行った.まず,観測 による時系列から求めた潮流調和定数の時間変動を求め,再現すべき観測値に含まれる不確定性を定量化した.さらに, 複数の数値モデルを用いて,モデル間の相違を示し,許容すべき範囲について検討を加えた.観測値からは,比較的振幅 の大きいM2分潮では,標準偏差で10%程度の不確定性があった.また,比較的観測値に類似した結果になったモデル間 でも10%~20%の相違がみられた.実際の数値モデルでは観測値に合わせるためのチューニングが行われる場合が多い が,全域で観測値に合わせることも困難であることを考慮すると,数値モデルによる潮汐流の再現性として,観測値との 相対誤差を10%以下に抑えることは困難であるものの,少なくとも20%程度までの相違に抑えることが合理的と考えら れる.

収録刊行物

  • 沿岸海洋研究

    沿岸海洋研究 59 (1), 47-57, 2021

    日本海洋学会 沿岸海洋研究会

被引用文献 (1)*注記

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