震災後社会における事業活動の実態と可能性 : 釜石地域を事例に

書誌事項

タイトル別名
  • The Reality and Challenges of Operating Businesses in Post-Quake Society : Cases from the Kamaishi Region
  • シンサイ ゴ シャカイ ニ オケル ジギョウ カツドウ ノ ジッタイ ト カノウセイ : カマイシ チイキ オ ジレイ ニ

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抄録

査読付き事例研究:Refereed

研究の概要(和文):本稿では、震災後の地域社会における中小企業の実態を分析した。復興支援は、マクロレベルで見れば一定の成果をあげているが、個々の地域においては様々な課題を抱えている可能性が高い。そこで釜石地域に絞り、アンケート調査とヒアリング調査の分析を行った。分析の結果、釜石地域において、行政、株式会社、NPO などによる多様な支援が行われていることが確認された。これらの支援活動は成果をあげているが、その一方で支援と事業活動の間にずれがあることも確認された。まず、釜石全体の都市計画の遅れが、個別事業者の経営計画に影響を与えていた。土地の利用などの扱いに難しい問題があり、復旧・復興計画を急ぐことは困難であると考えられるが、やる気のある経営者にとって、将来の見通しの悪さは大きな課題であった。また、事業者が経営を再開する際に、経営への意欲はあるが、ノウハウや人材において足りない部分を抱えている事例も確認された。もちろん、それらに対して支援が行われているが、足りていないという実態があった。支援を受けるにも、申請のための情報収集や書類書きにおいて大きな労力がかかることに留意すべきである。最後に、事業者の活動は経済活動の側面からだけ考えるべきではないことも確認された。事業を再開するにあたって地域のソーシャルネットワークの影響を受けていることはもちろんであるが、同時に事業活動自体が地域のソーシャルネットワークを構築していることも確認された。このような事業の多面的な側面を考慮しつつ、今後の復興を考えていく必要があろう。

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