覚書:満洲事変後の冀察方面における領事館警察の膨張について

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  • Memorandum:Co ncerning the Expansion of Japanese Consular Police in Hebei and Chahar after the Manchurian Incident
  • オボエガキ : マンシュウ ジヘン ゴ ノ キサツホウメン ニ オケル リョウジカン ケイサツ ノ ボウチョウ ニ ツイテ

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抄録

満洲事変後から華北分離工作の時期にかけて,中国の河北省・察哈爾省では日本の領事館警 察の膨張がみられたが,それはたんなる量的拡大にとどまらず,質的な変化をともなっていた。 満洲事変前には,この地域の領事館警察の分布は天津,北京など特定の地域に限定されていた。 これは領事裁判権を有する外国人が居住・営業の自由を享受できるのは,原則として開市開港 地に限定されているとの通商条約の解釈に,日本側もしたがっていたからである。ところが塘 沽停戦協定後,この地域では,日本軍隊が占領した非武装地域に日本臣民が進出し,その「保護取締」のために領事館警察が進出し,それによってさらなる日本臣民の増加というサイクルがみられた。その結果,この地域では治外法権を有したままでの日本臣民の「内地雑居」が現 出し,それに並行して領事館警察が増殖したのであった。このような状況は,満洲事変以前の 日本側の通商条約解釈からみても,それを大きく逸脱するものであった。そして日中戦争開始後には,日本軍の占領邸の拡大にともない,このような領事館警察の増殖現象が,華北全域さらには華中・華南の中国全体に拡大するのである。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 106 239-278, 2015-04-30

    京都大學人文科學研究所

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