<論説>「ガリエヌス勅令」と三世紀における騎士身分の興隆

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>"Edictum Gallieni" and the rise of the equites during the third century.
  • 「ガリエヌス勅令」と3世紀における騎士身分の興隆
  • ガリエヌスチョクレイ ト 3セイキ ニ オケル キシ ミブン ノ コウリュウ

この論文をさがす

説明

紀元三世紀、ローマ帝国は混迷の時代を迎える。この間、光首政は崩壊し、帝国の政治体制は専制君主政へ帰結する。先行研究は、この帝国変容を元老院議員の排除、騎士身分の登用をもっての皇帝権力絶対化の過程とみなしてきた。本稿では、かかる騎士身分の興隆に決定的な影響を与えたとされる「ガリエヌス勅令」の実態を解明することを出発点とし、議論は進められる。考察の結果、「ガリエヌス勅令」なるものは、実は、存在しなかったこと、さらに騎士身分の興隆の発端となった時期は、ガリエヌス帝期ではなく、それに先立つウァレリアヌス帝期であったことが明らかになった。騎士身分の興隆とは、皇帝政権による元老院抑圧政策の結果ではなく、ウァレリアヌス帝によって採られた帝国分治体制の結果、必然的に生じた皇帝の都ローマからの離隔に起因するものであった。ウァレリアヌス帝の治世は、ディオクレティアヌス帝期まで続く「軍人騎士身分の時代」の端緒として新たに位置づけられるのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 81 (5), 646-679, 1998-09-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ