九州西岸沿岸湖沼堆積物に保存された完新世におけるイベント堆積層

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タイトル別名
  • Typhoon Deposits at Coastal Lakes during the Holocene at the western coast of Kyushu Island, Japan
  • --- Applications for Ancient Typhoon Predictions using Diatom and Chrysophytes Assemblages –
  • --珪藻・黄金色藻遺骸を用いた台風襲来史復元の試み--

抄録

<p>沿岸湖沼堆積物中には,過去の津波・洪水・高潮などに伴う堆積層がイベント堆積層として挟在されている.これらのイベント堆積層は,その上下を静穏な環境で堆積した湖沼堆積層に挟まれていることがら,保存がよく識別も容易である.本研究は,珪藻および黄金色藻遺骸を指標とし,沿岸湖沼堆積物を用いて,イベント堆積層の判別と,イベントに伴う堆積環境の復元を試みた.九州西岸は,巨大台風の襲来が繰り返しており,それらの頻度と規模の歴史的変動は,今後の巨大台風の襲来予測のための重要な基礎資料となることが期待されている.研究調査地域は,天草大蛇池(池田池)および甑諸島上甑島なまこ池であり,過去7500年間の環境変動史,イベント性堆積層の判別,強風と高潮を伴った巨大台風史の復元を行った(図1).</p><p>本研究では沿岸湖沼堆積物中のイベント堆積層について,珪藻遺骸および黄金色藻休眠胞子を用い,そのイベントに伴う環境変動の復元を行った.珪藻は沿岸湖沼における重要な第一次生産者であり,小動物に捕食された後,その糞粒として湖底に堆積保存されている.そして沿岸湖沼において優占する珪藻群集は限定されている.これに対してイベント発生時には,高潮・波浪・洪水によって,外洋水,海岸,湖周辺低地などから湖内へ土砂移動が見られ,その堆積物中に産出する珪藻群集も大きく異なっている.</p><p>元寇以前のイベント性堆積層については,天草大蛇池(池田池)では6200 cal.yBPまでに10層準を認めた.このうち,9回は暴風と高潮による湖内への塩水流入が観察され,5回は湖水が一時的に塩水化していたことがわかった.一方,上甑島なまこ池においては,元寇以前に,6400 cal.yBPまでに8層準を認めた.これらはいずれも高潮や波浪に伴う外洋水の流入,礫洲湖岸から湖心への土砂移動が推定された.このうちの3回は,砂礫を大きく破壊し,湖水塩分の上昇をもたらしている.上甑島なまこ池と天草大蛇池(池田池)におけるイベント堆積層準には明らかな同時性があることからも,これらの過去6000年にわたり繰り返されたイベント性堆積層は巨大台風に伴う可能性が高いと考えられた.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390010292776675840
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_13
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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