臓器保存学を我が国に取り戻すために

DOI
  • 松野 直徒
    旭川医科大学肝胆膵移植外科 旭川医科大学移植医工学治療開発講座
  • 小原 弘道
    東京都立大学臓器医用工学

書誌事項

タイトル別名
  • Recent Progress in Clinical Organ Preservation, Machine Perfusion Preservation

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抄録

<p>欧米における心停止ドナーなどのマージナルドナーの増加に伴い心臓, 肺, 肝臓, 腎臓の機械灌流保存は多数の臨床試験の報告がなされ, 腎臓では急速に普及した. 我々は2016年より企業と灌流保存システムの研究開発に取り組んできた. ブタを用いて実験を繰り返し, その有効性を報告してきた. 2019年11月, マージナルドナーからの腎移植に対する多施設共同臨床試験を計画し旭川医大ならびに参加施設の倫理委員会で承認された. 現在まで11例において灌流保存後の腎移植が行われた. 良好な経過をたどった腎グラフトは灌流圧の低下と, 流量の上昇が観察された. 一方, 灌流保存に直結する有害事象はなく, 全例安透析を離脱した. 一方, 肝臓灌流保存については臨床応用を意識した基礎実験, たとえば, 分割肝移植をイメージした過少肝グラフトの灌流保存実験においては単純冷却保存よりも移植前短時間酸素化灌流保存の有効性を確認した. 今後, 我が国でも各臓器での臨床試験が期待される.</p>

収録刊行物

  • Organ Biology

    Organ Biology 29 (2), 144-148, 2022

    一般社団法人 日本臓器保存生物医学会

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