台湾と日本における,高さの異なる葯をもつミズガンピ(ミソハギ科)の花形態と繁殖特性

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タイトル別名
  • Floral Morphology and Reproductive Nature of <i>Pemphis acidula</i> (<i>Lythraceae</i>) with Two Different Anther Levels in Taiwan and Japan
  • Floral Morphology and Reproductive Nature of Pemphis acidula (Lythraceae) with Two Different Anther Levels in Taiwan and Japan

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説明

<p>ミズガンピPemphis acidula J. R. Forst. & G. Forst. は,アフリカ東部から太平洋地域にかけての海岸に広く分布するミソハギ科の常緑低木で,日本では奄美諸島以南の琉球列島に広く分布する.これまでアフリカ〜インド・マレー半島地域集団で進められた研究により,この種はその多くの集団で長花柱花と短花柱花の二型性が確認され(一部の集団では等花柱性),それぞれの花は高さが異なる二種類の葯をつけるという通常の二型花柱性にはみられない特徴をもつことが報告された.それゆえ,この種の二型花柱性は本来三型花柱性であったものから,中花柱花が消失することで長花柱花と短花柱花の二型になったと推定されてきた.しかし,それを論じるための繁殖特性についての調査はいまだ充分とは言い難く,また分布域全体を通じた調査も,特に日本を含む東アジア地域での調査はあまり行われていない.そこで,この種の形態・繁殖特性,さらには有効な送粉昆虫を理解するために,日本・台湾の4 集団を対象にして,花形態の変異の解析や授粉実験,送粉昆虫の調査等を行った.その結果,これらの集団はいずれも他の地域での報告と一致する二型花柱性を示すことが確認された.花粉サイズは,長花柱花よりも短花柱花の葯の方が有意に大きいが,同一花の高さが異なる葯間には有意な差は認められなかった.また,人工授粉実験により二型花は自家・同型花不和合性を示すこともわかった.三型花から二型花柱性に変化したとすると,中位の位置の葯にとっては本来の送粉器官(中位の柱頭)が失われてしまったことになるが,短花柱花の中位の葯は長花柱花の柱頭と,長花柱花の中位の葯は短花柱花の柱頭との間で和合性を示し,葯の高さが違ってもすでに二型性の状態にあることが確認された.さらに,送粉昆虫として西表島集団では短舌のハナバチ類,狩りバチ類がもっと有効であることが確認された.</p>

収録刊行物

  • 植物研究雑誌

    植物研究雑誌 93 (4), 225-239, 2018-08-20

    植物研究雑誌編集委員会

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