津守眞の保育思想における「転回期」の意義
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- 西 隆太朗
- ノートルダム清心女子大学
書誌事項
- タイトル別名
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- The Significance of the “Revolution Era” in Makoto Tsumori’s Philosophy of Education and Care
抄録
<p> 津守眞は, 自ら子どもとかかわる保育実践を通して独自の保育思想を築いてきたが, それは子どもの内的世界と保育的関係における相互的な変容過程を重視する点で, 現代においても他にない独自性と意義をもっている. この保育思想は1970年前後の「転回期」に生まれたものであり, 本研究ではこの時期における津守の体験と探究の過程に焦点を置いて意義を論じる. こうした体験を理解する上では, H. エランベルジェによる精神分析の歴史学, とくに新たな理論の創造過程に関する研究が手がかりとなる. 『乳幼児精神発達診断法』という労作を上梓した後, 客観主義的な研究によっては子どもの内的世界を理解しかかわることが困難だという限界に直面した津守は「混沌」を体験するが, それは子どもの発達過程においても創造の母胎としての混沌が体験されるという理解にもつながった. また, 客観主義的アプローチを超えて, 子どもとかかわって困難な時期を乗り越える心理療法的とも言える出会いを体験したことは, のちの相互的な変容の保育論にもつながった. こうした過程を検討することによって, 津守の保育学を理解する上でも, また保育学を探究する上でも, 研究者・保育者自身が, 子どもと出会う相互的な変容の体験をもつことが, 重要な意義をもつことが示唆された.</p>
収録刊行物
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- 日本家政学会誌
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日本家政学会誌 74 (4), 191-201, 2023
一般社団法人 日本家政学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390014481297396224
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- ISSN
- 18820352
- 09135227
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可